ポエトリー:
『月影』
夜の向こう側に降りてくる
柔い光が集まるという
煤けたコンクリートの階段
あの人の歩幅は頼りない
月影を半分こちらに向けて
にじり寄る電球が
チラチラともよおす殺意
誰に向けられたものではない
走り去る人の肩にぶつかって
階段をまっ逆さまに転げ落ち
それでも全体は丸く収まって
何事も無かったように終息していく
まるで古いビデオテープ
訳もなくこんがらがって
中身はいかほどでもない
どうりで汗をかかないわけだ
けれどどうしても落ちていく
落ちていく姿しか見えないんだ
白々として、もう朝になるというのに
そんな自分の姿しか見えないんだ
2018年12月