悲しみ

ポエトリー:

『悲しみ』

 

電車に乗るのが仕事か
すれ違いざま、君を見れなかった
今朝は早くに言葉を失くしたから
時間をかけて温めて
椀の中で休ませたい
白湯で

音を立てないサイフォンが頼りなく
呼吸すら定かでない
ただいまを言う代わりに
知らないことが増えていった
誰かが訪ねて来た
喫茶店のカランコロンみたいにちゃんとした姿勢だった

生まれてからまだちゃんと口にしていない
いい加減には出来ないんだね
邪魔者みたいに中古販売店の硝子ケースに仕舞われていたんだね
知ってるはずはないさ

 お前、
 そんな目で
 遠縁の人みたいなジェスチャーで近寄って来ても受け付けないよ

全て木曜日の夕方のせいにして
灰色のTシャツもろとも
赤く薄くなった所に馴染ませたい
じゃなかったら
明日はもう電車に乗れない

 

2018年8月

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