People Watching / Sam Fender 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『People Watching』(2025年)Sam Fender
(ピープル・ウォッチング/サム・フェンダー)
 
 
英国出身の30才。2019年のデビューで今回で3作目だそうだ。1stの頃はブルース・スプリングスティーンに影響を受けた所謂ストリート・ロックという触れ込みだったので、僕もなんとはなしに聴いた。でもそんなでもないかなという印象だった記憶がある。確かその年のサマソニのステージで観たはず。
 
そういうところから始まって、今はスプリングスティーンというよりキラーズに近いというもっぱらの評判。久しぶりに聴いてみると近いというよりもうまんまキラーズでした(笑)。アルバムタイトルにもなっている#1「People Watching」はキラーズの新曲と言ってもいいぐらいで、ブリッジのとこなんてそのものだ。間奏やアウトロではサックスが鳴っていて、こういうところはスプリングスティーン。でもまったく暑苦しくなくオシャレなリフが印象的に挟まってキレイにまとまっている。
 
オープニングのこの曲を聴き、これはどえらいアルバムだなと期待感満載で続きを期待して聴いていったのだが、落ち着いたテンポの曲が続く。フムフム、なかなかよいメロディで爽やか。しかし一向にテンポアップしない。。。もしかして最後までこの状態?と心配になってきたら、どうやら景気の良い曲は1曲目だけであとはずっとミドル・テンポの曲でした(笑)。
 
それこそキラーズばりに派手な曲があと2曲ぐらいあれば最高だったんだけどな。いいにはいいけどなんか物足りない。。。スプリングスティーンのように労働者階級のことを綴ったリリックがよいらしいけど和訳読んでないからそこまでわかんねぇ。いやいや、でもやっぱもうちょっと景気のいい曲ほしいよな。こうなってくると暑苦しくなくキレイにまとまっているのが逆に物足りなくなってくる。プロデュースがザ・ウォー・オン・ドラッグスの人らしいからもうちょっとスプリングスティーンぽいのあってもいいのにね。

Open Wide / Inhaler 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『Open Wide』(2025年)Inhaler
(オープン・ワイド/インヘイラー)
 
 
2023年の2ndから2年ぶりの3rd。劇的な変化はないものの、1stから2nd、2ndから3rdと着実に手堅いステップアップ。3枚目といえどコンスタントにリリースしているし、なんかもうベテランバンドのような安定感。派手な若手ロックバンドがいろいろと出ているけど、こういうバンドもいるというのが楽しい。
 
それは音楽性にも表れていて、世の中でどういう音楽が流行ろうがそういうところとは一切関係なく自分たちのロック音楽を実直に追及している。裏を返せばそれは自信の表れだろうし、こういう事を言うと下世話になるが、ボノの息子という事でシャカリキにならなくて済む育ちの良さも影響しているのかもしれない。
 
ということで冒険はしないが、曲調は多種多様。この辺りはソングライティングもそうだけど、バンドとしての表現力が並みじゃないということ。突出したキラー・チューンが前作ほどはないかなというのはあるけど、全体としての底上げは断然こっち。彼らなりのチャレンジもうかがえるし、アルバム単位で聴くのはこっちの方が楽しい。聴く回数もこっちだな。所謂じわじわくるアルバム。アルバムとしての平均点ではまたひとつグッと上がったように思う
 
全英アルバム・チャートでは2位。テイラー・スウィフトの企画ものに1位を奪われたみたいだけど、そんなこと関係なくこれだけの曲と雰囲気があればもっと売れてもよさそう。あとはイケメンの割に地味という、華やかさがイマイチというところだろうか。おやじ譲りのいい声してるんだけどなぁ。

This Cloud Be Texas / English Teacher 感想レビュー

『This Cloud Be Texas』(2024年)English Teacher
(ディス・クラウド・ビィ・テキサス/イングリッシュ・ティーチャー)
 
 
ここ数年、英国から新鮮なロック・バンドが登場しているけど、割とマニアックな音楽性に振れている部分はあった。それはそれで個性的なんだけど一般的なところにまで手が届くかというとちょっと厳しかったのも事実。その点、このバンドは技量に長けてるけど、間口が広くてテクニカルなところに流れていかない。バンド名もふざけてていい。
 
リリックがシンプルなのもいい。単にフレーズを置いていくだけであとはそっちで考えて、っていうツンデレ系ではあるけど、とてもポエトリーとして機能している。#3「Broken Biscuits」や#4「I’m Not Crying,You’re Crying」の似たようなフレーズを延々繰り返すカッコよさ。ボーカルも肝で基本リーディングでメロディーに乗せて歌うという感じではないのだが、リーディングのくせに跳ねるように歌っていやがる。このリズム感とか呼吸の入れ方とかは相当スゴイ。新種の才能と言ってよいのではないか。
 
ということでポエトリー・リーディングではあるけど、一向にだれてこない。ていうか、いろんなパターンがあってどの曲もめっちゃ楽しいぞ!それを下支えしているのは冒頭に述べたテクニカルなバンド。転調はあるし、プログレのような意表を突く展開を見せるし、バロック調のものある。けどあくまでもポップで楽しく。#8「R&B」や#9「Nearly Daffodils」のベースでリードしながらグイグイスピード上げていく辺りはめちゃくちゃカッコいい。かと思えば、#11「You Blister My Paint」のようなビリー・アイリッシュぽいスローソングで歌い上げたりする。ホント、楽しませてくれる。曲間が短いのもいいなぁ。
 
心配なのはこのアルバムのテクニカルだけどシンプルな明るさが今後も維持されるかという点。このやったった感は初期衝動にだからこそなし得たのか、それとも次もこの路線で屈託なくやっちゃうのか。いずれにしても今後に期待させるバンドの登場だ。
 

Imaginal Disk / Magdalena Bay 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『Imaginal Disk』(2024年)Magdalena Bay
(イマジナル・ディスク/マグダレーナ・ベイ)
 
毎年1組は何だこれはというアーティストに出会うが2024年はこれだった。米国のシンセポップ・デュオ、このアルバムが2枚目になるそうだ。もともとエレクトリカルなサウンドは嫌いじゃないけど、それはある程度といったレベルで基本は人肌が感じられるものであってほしい。そういう意味でもこのデュオはちょうどよいところを突いてくる。どこまでが生音かは分からんけどね。
 
並びで言えばパッション・ピットに近いかな。でもあっちの方がドラム感がドタドタしていたので生音感は強い。特徴的なのは女性ボーカリストの声。舌っ足らずなキュートな声がCHARAを思わせる。けどあそこまでシャウトはしない。楽しいのはコーラスだ。普段聴くロック音楽では聴けないような面白いコーラス・ワークをこんな特徴的な声でやられるとそりゃあ楽しいに決まっている。そういえばパッション・ピットのコーラスも印象的だった。最近名前を聞かなくなったけどパッション・ピットの方はどうしているのだろう。
 
こういう手の込んだ音楽ってどっちかっていうと日本から生まれてきそうなので、もう少し知名度が上がれば日本でも人気が出るかもしれない。エモとはちょっと違うけど、曲調は縦横無尽に展開するし、一時期流行ったEDMみたいにドーンと盛り上げるところもある。なにしろこの声なので感情に直接響いてくる。みんなこういうキュートだけどドーンと来るの好きなんじゃないか。
 
シンセポップということで侮るなかれ、結構スケールがデカいぞ。見た目もインパクトあって、今のトレンドとも合致する。楽しい曲がいっぱいあるし、サマソニかなんかで来日すりゃ一気に人気者になりそう。

Don’t Forget Me / Maggie Rogers 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『Don’t Forget Me』(2024年)Maggie Rogers
(ドント・フォゲット・ミー/マギー・ロジャース)
 
 
なんだこの説得力のある声は。まだ3枚目、このアルバム時点で30才ということらしいけど、貫禄があるなぁ。米国のシンガーソングライターであり、プロデュースも自身で手掛けている。曲といいサウンドといい派手なところはないが、実は相当な才人かもしれない。何気なさが逆にスゴイ。
 
とはいえメロディーラインは少し上の世代の影響も感じられ、1曲目「It Was Coming All Along」はテイラー・スウィフトぽいし、2曲目「Drunk」や3曲目「So Sick Of Dreaming」なんかはもろハイムのダニエル・ハイムが作ったんじゃないかと思うほど。つまり基本的には伝統的なスタイルの曲作りということのようだ。テイラーにもハイムにも米国ソングライターの系譜が感じられるが、マギー・ロジャースのその連なりだ。
 
ただそれだけで特別なアルバムを作れるということではなくて、今の時代に沿ったサウンド・デザインも必要。今回で言うとオーソドックスなバンド・サウンドによりオーガニックな米国ロックらしさを前面に出している。このアルバムがとても良かったので、前作『Surrender』(2022年)も聴いてみたらビックリ、そっちは一転シンセポップ風。それはそれで聴きごたえのある仕上がりになっているので、単純に何をするにしても目端の利く器用なタイプなのだろう。コーラス・ワークも見事だし、総じてレベルは高い。
 
逆に言うと得意技がなく、なかなか一点突破はしにくいのかもしれないけど、これからも安定的に素晴らしい音楽が聴けそう。個人的には彼女の力強い声は、全体的にキーが高めになるシンセポップより今回のようなバンド・サウンドが合うと思うけど、まだまだ若いからいろいろなことにチャレンジしていくのだろう。またひとり、気になるアーティストが増えた。

2024年 ベスト・アルバム

2024年 ベスト・アルバム

 

2024年は明らかにロックが息を吹き返した年だった。ロックバンドらしい過剰で活きのよいバンドが次々と生まれた。ザ・ラスト・ディナー・パーティーやフリコのライブ動画は何度見たことか。荒々しいシャウト、じっとしていられない体、ロックバンドの格好良さを体現するバンドに久しぶりに出会った気がする。なんだかんだで生身の人間が演奏して歌うという体感は理屈抜きに訴える力がある。ロックだけでなくそういう人たちが増えてきたことが素直に嬉しい。

ということで2024年の僕のお気に入り。先ずは柴田聡子『Your Favorite Things』。歌詞が見事に音楽化していてホントに参ってしまった。岡田拓郎を迎えたアレンジもあくまでも曲も寄り添っていてイイ感じ。同じシンガーソングライターで言えばクレイロ『Charm』も最高でした。もちろん彼女の作る曲がいいのは前提なのだけど、ボーカルやアレンジといった曲としての完成度がもの凄く高くて本当に聴いてて気持ちよかったです。

あと、ビリー・アイリッシュの『Hit Me Hard And Soft』もよく聴きました。今まではどうしても世代を代表する人、という感じでしたが、このアルバムで世代関係なく広く聴かれるアーティストになった気がします。レディオヘッドならぬザ・スマイルの新作2枚もよく聴いた。レディオヘッドじゃないというところが不満ではあるけど、トム・ヨークのあの感じにはやられる。どっちがいいということもなく、どっちも個性があってどっちもよかった。

そして僕の2024年ベスト・アルバムはなんだったか。柴田聡子『Your Favorite Things』かクレイロ『Charm』か非常に迷うところではあるけど、キラー・チューンの多さでクレイロ『Charm』に決めます。特にここ、っていう個性があるわけでもないのにこれだけ耳に残るのはやはりこのアルバムの持つ普遍性だと思います。あとは2024年の個人的ベスト・トラック。いい年してなんですが、ビリー・アイリッシュ『Birds Of A Feather』にしようと思います。あのビリーが声を張り上げるとこが最高でした。この曲はYouTubeで観た「Amazon Songline」での歌唱が特に好きでしたね。

せっかくなので、ここまで書いた以外で好きだったアルバムを挙げていくと、ヴァンパイア・ウィークエンド『『Only God Was Above Us』。フォスター・ザ・ピープル『Paradise State of Mind』。マグダレナ・ベイ『Imaginal Disk』。マギー・ロジャース『Don’t Forget Me』。イングリッシュ・ティーチャーの『This Cloud Be Texas』はかなり聴いた。あとフォンテインズD.C.『Romance』はとてもよい評判でしたけど僕はそこまでではなかったかな。全体としては今年も女性アーティストを聴く機会が多かった。僕の年間ベストもこれで5年連続して女性アーティスト。僕の耳に入ってくるのがたまたまそうなのかもしれないが、女性アーティストの方に新しい人が次々と出てくるという印象はやっぱりある。

ちなみにSpotifyによる2024年に僕が最も聴いた曲の上位のほとんどがザ・ラスト・ディナー・パーティー『Prelude to Ecstasy』からの曲。じゃあこれをベスト・アルバムにしろよという話ですがそれとこれは別です(笑)。そんで最も聴いたアーティストはザ・スマイル。2枚出たからやね。

CDをほとんど買わなくなってメインは完全にSpotifyに移行している。おかげで視聴がてらいろいろと聴けるようになり、聴くアルバム数は格段に増えた。ただそれがいいことなのかどうか。以前のようにブックレットを見ながらじっくりと聴く機会は確実に減っている。僕も例に漏れず情報過多かもしれない。

2025年はオアシス再結成ツアーというビッグ・ニュースがあるので、ロックが更に大盛り上がりしそうだ。ちなみに来日公演、僕は抽選も一般発売もすべて完敗でした。。。

Paradise State of Mind / Foster The People 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『Paradise State of Mind』(2024年)Foster The People
(パラダイス・ステイト・オブ・マインド/フォスター・ザ・ピープル)
 
 
アルバムを気に入るパターンが2種類あって、ひとつは1、2回聴いてすぐに気に入るパターン。もうひとつは最初はあんまりなんだけど、繰り返し聴いているうちに好きになるパターン。フォスター・ザ・ピープルはもうずっと後者です。前回の『Sacred Hearts Club』(2017年)はその典型で聴く度にどんどんはまって最終的には2017年の個人的ベストに選びました。ということで今回のアルバムも最初はあんまりでしたけど(笑)、きっとよくなると繰り返し聴き続けました。そうするといろいろ見えてくるんですね。
 
これはなんでか。これも昔っからフォスター・ザ・ピープルはそうなんですけど、曲としては非常にポップではあるもののそれは初期衝動とか、あるいは気質的に作ってるとそうなってしまうっていう自然とポップになるっていうタイプじゃないんですね多分。聴いてるともう歌詞は暗いし、特徴的なマーク・フォスターの声なんか聴いてるとそれはホントにそう感じます。ただ、反するようですけど、マーク・フォスターは常にポップな作品を作ろうと心掛けている。つまり彼は職人なんですね。出来たらこんなんになっちゃったというのではなく、作ろうとして作っているわけです、多分。
 
でも軽く聴いてる分にはそんなこと分からない。ただ繰り返し何度も聴いてるとそういう細かさ、心配りが見えてくる。ま、ざっくりとはそういう人はいますけど、ここまで作り込むタイプの音楽家ってあんまりいないかもしれないです。非常に集中力の高い音楽家ですね。
 
ついでにもうひとつアルバムの聴き方があって、それはイヤホンで聴くかスピーカーで聴くかの違いです。なんか不思議とイヤホンで聴くよりスピーカーで聴いた方が断然いい場合があるんです。もちろん逆もありますけど、このアルバムは圧倒的にスピーカーから聴いた方がいいですね。繰り返し聴いてるうちに好きになってきて、最後、スピーカーから聴いて、あ、これええわ、で決定的になりました(笑)。
 
あとはこの微に入り細を穿つこの音楽がどうライブで再現されるかですね。前作の来日は気付いたら終わっていまして、残念ながら僕はまだ彼らのライブに行ったことがないのです。このスタジオ・アルバムがどう表現されるのか、一度聴いてみたいものです。
 
 

『Charm』(2024年)Clairo 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『Charm』(2024年)Clairo
(チャーム/クレイロ)
 
 
米国のソングライターということですが、雰囲気としては気だるい欧州という感じ。アルバムジャケットの印象のせいかな。世代的にはボーイジーニアスと同じようなものかもしれないが、あちらはやはり米国という事でギター・サウンドがメインであるが、こっちのサウンドを特徴づけているのはピアノやフルート(かな?)だったりするので、やっぱ欧州的な印象は受ける。
 
ジャック・アントノフだとか元ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタムといった有名どころと組んだという1stや2ndを僕は聴いたことがないが、今回のアルバムは一転してバンドによる生音にこだわったそうだ。元々、ベッドルーム・ミュージックという私的なところから始まった音楽活動のようなので、1stや2ndは大物プロデューサーの手を借りながら、ということだったのだろう。いずれにしてもこれだけメジャーな人と組んでいたわけだから、表現者としてそれだけ魅力があったということ。
 
それを表明するように本作のソングライティングもとにかく素晴らしい。アルバムは11曲あるが、それぞれにちょうど良いクセ、個性があり、しかもそれがオープンな表現となっている。それらが抜群の演奏で奏でられるわけだからそりゃいいに決まっているだろう。特に4曲目の『Slow Dance』あたりからの演奏が本当に素晴らしくて、曲もいいけど音に集中することでまた違った楽しみ方もできる。
 
先ずもって曲がいいからそれを壊さない形で演奏が進んでいき、曲ごとにアクセントになるような印象的なフレーズが必ずと言っていいほど挟まれてくる。クレイロ自身の手腕がどの程度まで及んでいるのかは分からないがバックの演奏と素晴らしいソングライティングが見事に溶け合った本当に豊かなアルバムだと思います。
 
#2『Sexy to Someone』や#5『Thank You』や『Add Up My love』といったポップチューンも満遍なく配されていて、その辺も抜け目ない。ひとつ希望を言わせてもらうと、全編ウィスパーボイスは物足りないかなと。どこか一瞬でも感情を爆発させてほしいなというのは野暮な話でしょうか(笑)。

Flying On Abraham / Diane Birch 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『Flying On Abraham』(2024年)Diane Birch
(フライング・オン・エイブラハム/ダイアン・バーチ)
 
 
ダイアン・バーチ、3枚目のアルバム。前回が2013年だから実に11年ぶりの新作アルバムとなる。その間まったく何もなかったわけではなく、単発的にシングルやミニ・アルバム的なものはあった。が、こうしてまとまったアルバムという形で出るとやはり気持ちが高鳴る。よい音で聴きたいと、久しぶりにCDを購入した。
 
前作、といっても11年前だから比べるべくもないのだが、80年代に回帰したようなポップ・アルバムを目指してやたら熱量の高かった前作に対して、今回はあのデビュー作のようによりシンガーソングライター的なアルバムに戻っている。戻っていると言っても今回の方がより現代的になっているというか、ビンテージさは後退し、より今の時代のシンガーソングライターとしての歌が流れていることが嬉しい。
 
確かにダイアン・バーチは今では他に類の見ないその音楽性で語られがちだけど、根本は歌の人。それはポップさを前面に出した前作でもあのデビュー作でもそう。この度届けられた新しいアルバムを聴いて改めてその思いを強くした。美しいメロディが独特のアルトボイスから境目のないファルセットで伸びやかに歌われる。音楽を聴いてこれほどうっとりする瞬間はそうあるものではない。
 
曲調も一辺倒ではなく、オープニングの#1『Wind Machine』ではサザンロックのようないなたさ。続く既発の#2『Jukebox Johnny』ではそれこそローラ・ニーロのように転調を繰り返し、折り返しの中盤ではスケールの大きな#5『Critics Lullaby』でエモーショナルに。#9『Used To Lovin’ You』はポップなダンス・ビートで上げといて、最後の#10『Trampoline』はこれぞキャロル・キングな歌でしっとり終わる。13年ぶりだからもっと曲数を欲したいところだけど、シンガーソングライター的といえば10曲というコンパクトさがいいのかもしれない。
 
あとはこれをライブで聴きたいところだけど、来日公演は東京のみだとさ。ビルボードだから近くで聴けるんだろうなぁ。うらやましすぎる‼ 約10年前の来日公演も逃したし、まだ一度も行けてない。いつか生で聴いてみたいけど、次の来日も10年後なのかなぁ(笑)。
 

Hit Me Hard And Soft / Billie Eilish 感想レビュー