ポエトリー:
「パークタウン」
穏やかな秋晴れの日
運河沿いのパークタウン
風は何を運ぶでもなく
無口をつらぬく
久しぶりに
外の空気を吸い込む
振り返るいとまもなく
今日にうちに含まる明日
手すりの向こうには
やりたいこと、やり残したこと
通りゆく船が
雑に混ぜ返す
秋晴れの日
景色は何も変わらない
水面は静か
風は何も運ばず
運河沿いのパークタウン
2021年10月
ポエトリー:
「パークタウン」
穏やかな秋晴れの日
運河沿いのパークタウン
風は何を運ぶでもなく
無口をつらぬく
久しぶりに
外の空気を吸い込む
振り返るいとまもなく
今日にうちに含まる明日
手すりの向こうには
やりたいこと、やり残したこと
通りゆく船が
雑に混ぜ返す
秋晴れの日
景色は何も変わらない
水面は静か
風は何も運ばず
運河沿いのパークタウン
2021年10月
ポエトリー:
「溶解」
手違いで訪れた世界
手のひらで溺れた人という文字を書いてみる
重ねてみる
くちばしであなたを尋ねてみる
新しい我が家に
新しい生物が
ここはわたしではなかったですかと問いかける
あなたの庭に
満開の花が咲くころ
かれんな姿のご婦人は
ご苦労さまと出ていった
手違いでゆらり
見たことのない衣擦れの
音、重なるほど
余韻の軋む音
偶然の成り行き
それとも迷い込んだ
不可思議な国の楽園は静かに体溶かして
あなたといた時間が頬を流れる
2021年9月
ポエトリー:
「どこかにきずついているひとがいたら」
どこかにきずついているひとがいたら
ひとまえではなくまいと涙をこらえているひとがいたら
どうしてかわからなくて
なぜだかわからなくて
いきもできずに ことばもだせずに
だったらぼくがだいじょうぶってゆうよ
ぼくはもうきみのてをひいてやれないけど
きっとせいいっぱい
だいじなひとからてがみがたくさんくるくらい
ゆうひがまっかにそまるくらい
さよならがこんにちはにひっくりかえるくらい
だいじょうぶってゆうよ
そしたらダイヤモンドよりとうめいなきみの涙は
クレオパトラみたくせかいをそのてにいれて
まっすぐなにじになる
そしたらあまがえるがちょんととびはねて
きみがわらうよ
2012年5月
ポエトリー:
「午睡」
喫茶店のカランコロンと共に
君が入ってくるのを夢見て午睡
気がつけば
カップの底がカチカチ音を鳴らして歩いています
同じように時、重ねた日々はそこになく
苦いコーヒーをかき混ぜても
泡立つはただ
カランコロンの響きのみ
カップの縁を時間がよろけるように歩いています
足を滑らせぬよう見守りながら
わたしの役目は眠るふり
2021年11月
ポエトリー:
「遠い山なみ」
あちこちに立ち並ぶ群青色した肉体に
感動して君は頭から血を流した
生きていることの蓋が開いたような気がして
あちこちの人に話しかけてみる
葉巻みたいにウンザリ、とした表情で煙たがられることもしばしば
それでもリレーの第一走者のような気分でスタート・ラインに立つ
華奢な体で
あちこちに立つ狼煙、
不定期に届くダイレクトメール、
そのひとつひとつに
不確かな未来の口も開いている
けれど勘違いしないで、と彼女は言う
柔らかな肌を滑りゆく君の反動
あくまでも肉体は群青色
ガサガサと音を立ててそぞろ歩く
けれど勘違いしないで、彼女は何度もそれを言う
————————————–
遠い山なみを指でなぞるようにして、彼女は一昨日のことを思い出していた
遠い時代が被さる彼女の面影には一切のモラルが抜け落ちているようだった
指一本なら本当の自分を描けるよ
遠い山なみがそう言うのを待ってから、彼女はおもむろに席を立った
軽くお辞儀をしているようにも見えた
彼女は納得したがっていた
人々が完成と言う完成が何処にあるのかを
惰性と言う惰性が何処にあるのかを
身近な存在
そうかもしれない
何を意味するかをとうに知っているように
問題は遠回りをしてきつく体に巻きつく
駅前に小さな書店があればいいな
夜になれば小さなろうそくに火を灯し
形あるものは全て溶かして再び形あるものに
彼女はお財布の中身を勘定して横になる
初めての時みたいにゆっくりと身を委ね
モナリザ
まるで家族の一員みたいに
ゆっくりとモナリザが横になる
2021年10月
ポエトリー:
「ランデブー」
もしも君が僕より先に死んだなら
冬の空気より
雪の結晶より
透明な君のまごころ
君の灰を
まるで君のままのように柔らかく抱き締める
ランデブー
ナイロビの砂漠に浮かぶゴンドラ
と同じ月に僕らは運ばれる
それまでは
ミケランジェロより不恰好でも
太陽の塔のように胸を張り
サクラダファミリアよりも永遠に君を愛す
秋の夜長みたいに
ゆっくりと時間をかけて
僕たちは年をとる
2012年11月
ポエトリー:
「10月17日の短い詩」
初めての朗読会の帰り道
電車から見える景色は全てがカーテンで覆われ何も見えない
特に見たいものがあるわけじゃないけれど
2021年10月
ポエトリー:
「待ちぼうけ」
世界一大きなあなたの言葉を重しにして
私は日々を繋いでいます
その重しに絵を描いて落書きをして眺めていると
身近に感じられます
公園で拾いものをして
それは綺麗な丸みをおびた石で
軽く握ったら冷たくて
思わずポケットにしまい込みました
家に帰る間
ポケットの中で手は軽く握られたままで
それはどうしようもなく
ヒナのように優しく包んであげないといけないものでした
家に帰るとそれを靴箱にはのせず
ダイニングテーブルの花瓶の横に置きました
もちろんすすいだりはせず
軽く握ったままを保つように
私たちは朝日を見て目が覚めるけれど
固く閉じたままのヒナをかえすのは難しい
心に閉じた楽園をいつか目にすることが生きることだと
あなたが言った重しのような言葉を
ためらいがちにそっと吐くと
白い息に混じって
絵を描いて落書きをしている私が見えます
そこに置いたのは待ちぼうけの心
軽く握ってなぐさめた
世界一大きなあなたの言葉を重しにして
私は日々を繋いでいます
どうすればもっと身近に感じられるでしょうか
私はあなたに会いたいです
2020年8月
ポエトリー:
「10月10日の短い詩」
わたしたちの詩歌は
うっすらと虹をかけている
足元に難題をたたえて
2021年10月10日
ポエトリー:
「10月7日の短い詩」
昇る街の上
はしゃぐ君の顔
ふたつ上がらない太陽のひとつになる
2021年10月