ポエトリー:
「戯れ」
わたしたちは一歩
足音を早めてる
束の間届いた
夜の戯れ
今夜もあっけなく時は過ぎてゆき
確かに掴み得た想いは
淡い企み
それすら砂
振り向けば
振り出しに
その速度も
足早に
2022年7月
ポエトリー:
「戯れ」
わたしたちは一歩
足音を早めてる
束の間届いた
夜の戯れ
今夜もあっけなく時は過ぎてゆき
確かに掴み得た想いは
淡い企み
それすら砂
振り向けば
振り出しに
その速度も
足早に
2022年7月
ポエトリー:
「助けにいかなくちゃ」
あの子がケガをしている
今すぐ、
助けにいかなくちゃ
わたしたちが目指すのは惑星、太陽、それとも月
いずれにしても
あの子が泣いてちゃ始まらない
人々は雨のち晴れと言うけれど
立ちこめる雲を追い払い
傷薬を用意して
とにもかくにも
今すぐ会いにいかなくちゃ
あの子がケガをしている
人が聞いたら
泣き出すほどの
痛みをこらえて
2022年6月
ポエトリー:
「もののはずみ」
ありもしないものは
はじめからそこにないのだから
なくなったりはしないのに
どこにいったいつなくした
あそこにおいたはずなのに
こにくたらしいかのじょのえがおに
なんどにがむしをかんだかなんて
きどったようにいったとしても
そんなこともあったようななかったような
ありもしないものは
はじめからそこにないとしりつつも
むねぽけっとのたかなりは
なんだったのかとたずねてみれば
それはもののはずみというものですよ
ねぼけまなこのたかなりが
あっちへふらふらこっちへふらふら
ついぞみはてんあなたののぞみは
けっきょくちいさなむねさんずん
さりとてちいさなむねさんずん
ありもしないからはじまるのですよと
わかったようなくちぶりで
それこそもののはずみです
2022年3月
ポエトリー:
「ネットショッピング」
明かりが漏れている
冷蔵庫が開いている
バタンと咳をして
扉を閉める
どこへ行ったのか
この部屋の暗がりは
いずれどこかの押し入れに
隠れたろうか
スマートフォンがついている
天井を照らしている
闇に光るマーケット
今夜は何を買わせるのか
どこへ行ったのか
ずっと大事にしていた宝物は
いずれどこかの戸棚にでも
隠れたろうか
箱買いしたトマトが
冷蔵庫で延々と冷やされ
もはや震えている
2021年11月
ポエトリー:
「記録」
不意にかすめた
左目の奥には
少し濃いめの
小さな記録
配線は
緩やかな円を描き
頭の位置で
ショートする
ひとり占めしていた
短い夏の思い出は
両手を挙げて
それは見事なさようなら
もちろん
思い出すことなど
なかったよ
だってもうこれは、
期限切れだからね
2022年5月
ポエトリー:
「サヨナラ」
見違えたよ
その喋り方
見違えたよ
その微かに目にかかって前髪
急にどうしたんだいという声に備える君の
億劫な瞳
いつでもどこでも
見ず知らずの人に喋りかけられるようにいたい
そんなことを仲良しの友達にも言う君に
僕たちは悪気がないようクスクス笑った
そんな日の明け方、
僕たちの靴下にはよじれたような染みがあって
けどそれには目もくれずおしまいの証、
サヨナラと
手を振りあったりしたんだよな
2022年3月
ポエトリー:
『朝の光』
緩やかな髪のウェーブに光がさして
それは朝の光だから見ることをやめない
ずぶ濡れの夕べの記憶は
バタートーストと共に
喉の奥に流れた
はず
今朝みたいにたっぷりと時間がある日は
コーンスープをしっかりと
飲み干すだけの余裕が私にはある
これも、はず
朝からつまらない冗談を言う父親の
気の抜けた声にはまるで覚悟がない
これが我が家のトップランナー
けれど贅沢は敵
私はある程度の相槌が打てる子だ
たかが一年ばかり早く生まれただけで先輩面するアイツにも教えてやらねば今朝のスローガン
贅沢は敵
小学校の時に覚えさせられた寿限無が頭を離れない
水行末ならぬ水餃子
コーンスープと合わないことは知っている
それはとても大事なこと
緩やかな髪のウェーブに光がさして
けれどまだ勝ち名乗りはするなよ
今日はまだ始まったばかりだということを忘れるなよ
2019年5月
ポエトリー:
「僕の相棒」
明け方に
君の輝きを見た
いつもより1分早い速度で動いていた
おはようと伝えるとおはようと返す
暮らしはいつもささやかに
怯えは胸ポケットに
台所からはコーヒーの薫り
いってきます、僕の相棒
君が僕より少しだけ幸せでありますように
2021年4月
ポエトリー:
『残り湯』
残り湯で体を温めてくれる経験が
二人をそっと包みます
両方の手の形をした炎がぼうっと
二人の暮らしを照らしています
きっと食卓の中心には
温かいお茶があって
二人の会話は弾みます
夜半過ぎ
短くて長い一日の終わりがどちらにも行けず
ひとりぼっち
まだ湯船に浮かんでいます
2021年12月
ポエトリー:
「流れり」
薄いピンクのあなたの頬にそっと手を当て
浅い眠りについた朝ならほら
まだここにあるさ
まごついた手
でシーツを鷲掴みす
みたいに形なす花弁は
次第に痩せ細り
指先に流れり
太陽からの眺めもまた
まごついたまま
己が手でひと掴みする隙間などなく
時はよしなに流れり
listening…
淀みなく
listening…
時間が来たよ
薄いピンクのあなたの頬を
コップ一杯の水に汲んで
静かな朝の
時計は流れり
2021年6月