ポエトリー:
「野末」
朝方に見た君の声が
夕方、野末の向こうに落ちていた
君がここを通ったわけでもなかろうに
結局のところ
ポエトリー:
「野末」
朝方に見た君の声が
夕方、野末の向こうに落ちていた
君がここを通ったわけでもなかろうに
ポエトリー:
「出て行った」
手当たり次第袋に詰め込む君は
安いからねと
もう夕刻
君の
肩から肘にかけての
星座のようなポイント
そこを突くと新しいものが出てくる気がして
人目も憚らず
僕は人差し指から小指にかけての四本で突いてみた
そしたらどうだろう
かつて無かった花束が
地表の底から湧いてきて
誰かれともなく口々に
おめでとうおめでとうと言うではないか
すると君は
まるで福引きにでも当たったように
恥ずかしそうにお辞儀をして
これから行きますこれから行きますと言うではないか
手当たり次第袋に詰め込む君の
肩から肘にかけての大事なポイントを
僕が見つけたことなど全く知らずに
君はその日のうちに
出て行った
2023年4月
ポエトリー:
「農夫の黄昏詩」
一度発話したことがある
黄昏詩と
思ってもみない方向から言葉が来たと
手拭いを懐に入れ振り向く表情も
黄昏詩だ
艱難に耐え
ようやくここまでたどり着いた表情に
いくら難しい言葉を当てようとも
それは黄昏詩
民族の歴史が
その手に凝縮されるのを
わたしは見たことがある
夕刻
田畑に流れ星は
どこまでも走る
2023年3月
もしも
喉のとおりが悪くなったら
吸い込むのは少しやめて
吐き出すことも熱心に
それでもわたしには
心配事があり
出てくる言葉はつっかえて
よくあること
ありもしないこと
だからなにかのおまじない
それがあなたならなおのこと
もしも
大切なひとへの便り
悪い方角へ向かったら
それは思いがけない悪魔のしたたり
だからなにかのおまじない
金輪際来ないでおくれと
夕暮れ歩く自分の姿に
小さく✕と書きました
ポエトリー:
「四肢」
信じられないかもしれないけど
腕がたくさん生えて暗闇のなか
バタバタと手、伸ばしても
あなたには届かない
信じられないかもしれないけど
背中じゅうに羽が生えて自由飛行
大空へ羽ばたいても
あなたにはたどり着けない
信じられないかもしれないけど
この足は獣より早く
大地を蹴り上げても
あなたを見失う
けれどこの世に生まれた証
あなたを求め生まれた四肢
腕がもげて
羽が引きちぎれて
足が棒になっても
水しぶき上げてもがいてみせよう
すべては他ならぬあなたのため
2022年2月
ポエトリー:
『果物の王』
果物の王はりんご
あめつちの王はりんご
バナナやブドウを従えて
みかんという民がいたりして
メロンという彼の国の王がいたりして
ザクロという元の国の王がいたりして
山育ちのクルミは時折街へ降りて来て
落花生は抜け殻で昼寝中
お手伝いの松の実は待ちくたびれて
パイナップルは季節を間違えて
キウイはいつも毛並みを気にして
冗談なんか言うポテトの山
だいたいいつもカボチャは退屈で
柿は今日も筋肉痛
パプリカは頑なで
三色揃って頑なで
芸のない大葉は頑固者
わたしらの今日あるのはあの人のおかげだよ
さくらんぼの実は種まで生きる
果物の王はりんご
あめつちの王はりんご
赤いりんごはレッドです
2017年10月
ポエトリー:
「暦」
期待させて悪かったね
僕は暦へあと一歩届かないんだ
うまく言えないけど
一年、また一年とこういうものはいつも
減っていくよりむしろ増えていくんだね
日頃、できるだけ多くの扉を開けようとするけれど
手にするものはほんの少し
むしろ出来なかったことが増えていくんだね
君だって大事なこと、
失ったような顔してるけど
失っちゃいない
増えているんだ
証拠にほら
少しずつ影の色が濃くなって
溶け合う隙間もなくなって
仰ぎ見ることすら忘れてしまった
もし君が
手にしたものをすぐに手放すような人だったらこんな苦労はなかったろうにと
もちろん僕にそんなこと言う勇気はなくて
僕だってほら
大事なこと、知ったような顔してるけど
一年、また一年と
増えていくことに抗いもせず
暦へまだ
あと一歩届かないんだ
2023年2月
ポエトリー:
「優しくない人の言葉」
優しくない人の言葉小脇に抱え
冷たい雨
そんなの駅のベンチに捨て置き
早く次の電車に乗りなよ
君の両腕はもっと大事な事
抱えるべきだよ
2022年10月