さよならは転じる

ポエトリー:

『さよならは転じる』

 

君がまだ若かった頃

虹が架かっていた

海は凪いでいた

耳を澄ましていた

 

外連味ない瞳のブルーと

背伸びをした君との不釣り合い

 

ある日不意に夕暮れが訪れた

その夜  君を色濃く浮かび上がらせた悲しみは

ビロードの襞となりまとわりついた

ずっと側にいてほしかったと離さなかった

 

しかしそれは血となり肉となり君の内に根付く

君はまだ知らないだろうが

 

さよならは

さよならは

すべて転じる

まだ見ぬ君の美に

 

2014年4月

ポエトリー:

『道』

 

君は何度も何度も何度も何度も何度も…
空を仰いで
鳥のように雲のように旅人のように
答えを聞いた

君は何度も何度も何度も何度も何度も…
世界をぬって
風のように糸のように歴史のように
道を探した

懐中電灯を片手に
照らした 足元だけじゃなく
時折
誰かの落し物を 見つけた

君は何度も何度も何度も何度も何度も…
踵を蹴って
ツグミのようにシャボンのように干草のように
河を渡った

君は何度も何度も何度も何度も何度も…
恋人を呼んで
二人はいつしか波のようにさざ波のように
小さく暮らした

出来るだけ穏やかに
暮らしてゆきたいと
人知れず静かに
愛し愛されてゆきたいと

二人は何度も何度も何度も何度も何度も…
世界を越えて
虹のように星のように月のように
大地を巡った

二人は何度も何度も何度も何度も何度も…
星をまたいで
父のように母のように祖母のように祖父のように
時を重ねた

君は何度も何度も何度も何度も何度も…
答えを聞いた
世界は何処から来て
あなたは何の為に

君は何度も何度も何度も…
あなたは何処から来て
私は何の為に

君は何度も何度も…
私は何の為に

 

2017年7月

 

魚屋

ポエトリー:

『魚屋』

 

近未来

過去6時の方向で

死んだ魚が泳ぐヒレ

垂直に落ちる汗共々

光を遮るため地下に潜る

ハイウェイを過ぎて真夜中のトンネル

窮屈に揺れます

初めてのウェイクボード

 

頭並べて仲良く

発泡スチロールの中

なだらかな肩に

砕いた氷の上で落ち着いて

ようやくのんびり過ごします

でも死んでます

真夏の魚屋の軒先で

そのうち誰かの家へ売られます

 

2017年7月

 

あの人のことを知りたければ

ポエトリー:

『あの人ことを知りたければ』

 

韓国人の事を知りたければ

韓国人の詩を読めばいい

アメリカ人の事を知りたければ

アメリカ人の詩を読めばいい

中国人の事を知りたければ

中国人の詩を読めばいい

 

ただそれだけのこと

気まぐれや気取りは詩になっても

嘘は詩にならないから

 

だから君も

誰か気になる人がいれば

その人の詩に耳を傾けてみて

きっとどこかに顔を出しているから

 

もちろん君の詩も公開しなくちゃね

 

2015年1月

オレトレース

ポエトリー:

『オレトレース』

 

胸に三センチ 奥の弾丸抜き出す

駆け出す 勾配ものともせず

矢のように 駆け抜ける

かつて老人たちが見た夢 いた景色

遠のいてフラッシュバック

高速コーナー 斜めに入って

落ち着いた態度で索引

目を引くような娘 目の前の群れ

弾丸目で追いかけ しかしすぐに息粗く

頭の中渦巻く 何もかも一緒くた

最終コーナー先んじて 一歩先行く

君は抜け出た弾丸

弾丸はかろうじて 数歩詰め寄る

運命の糸 足絡ませ

手繰り寄せ タグを付け

胸の奥三センチの弾丸

今日も抜き出す

 

2017年7月

 

いい言葉を聞きたい

ポエトリー:

『いい言葉を聞きたい』

 

いい言葉を聞きたい

出来れば琥珀に乗せて

夕方、

うつらうつらの調べに乗せて

 

もしくは君の声

喉の奥、

3センチに詰まった君の声

 

あるいは旅に出て、

リラックス

2泊3日で帰ってきた声

 

穏やかな午後

いい言葉を聞きたい

いっそのこと

君の声を借りたい

 

2017年7月

ポテトサラダ

ポエトリー:

『ポテトサラダ』

 

エアコンから君の噂話
温度を下げて聞こえなくしてしまおう
キッチンに戻って食べかけのポテトサラダ
君の得意技
マヨネーズが少しばかり多い

君はキッチンに立った
現代音楽の巨匠みたいに
味はともかく、
うるさかった

鍋を二個以上使うのが苦手だった
君の得意な料理がポテトサラダで
僕の得意な料理が麻婆豆腐というのも
君が気に入らないことの一つだったけど
そういうところがいいと言う僕をまた
君は気に入らなかったのも事実

努力すべきことではないと知りながら努力をし続けた僕たちに見切りをつけ君は
世界の事を少しだけ知り得た猫みたいに大きく背伸び
律儀に話し合いをして僕たちの夏は終わった

僕がこうして
ポテトサラダを作るのは
君を懐かしんでいるからではなく
マヨネーズが少しばかり多くなってしまうのも君のせいじゃない

けれど僕の作るポテトサラダが微妙に上手くいかなくなったのは
きっと全部君のせいだ

 

 

2017年7月

引き出しはゼロになる

ポエトリー:

『引き出しはゼロになる』

 

本当のことを知りたい君 夜更かしがやめられない

全部0にして朝を迎えるつもり しかし朝の光が気持ちを拡散

1からやり直し 本当と嘘を折りこみ

引き出しの奥 遠く耳鳴り

黒いTシャツから覗く 軽く尻込み

人を好きになって自分を知る 0にはなれない

この気持ち積上げて 時空の壁を蹴り上げる

地球の自転を越え ついでに月の公転も越え

何周も何周も素早く ダイナミックに何周も

ところでふと 始まりはいつだか終わりはいつだか

朝はどこだか夜はどこだか また1からやり直し

引き出しは結局 全部0になる

 

2017年7月