OK Computer/Radiohead 感想レビュー

洋楽レビュー:
『OK Computer』(1997) Radiohead
(OK コンピューター/レディオヘッド)
 

『ザ・ベンズ』 の時に僕はこれは死の直前のほんの数秒の物語と書いたが、『OK コンピューター』はそこから更に天空を漂っているイメージ。 歌詞にも great height なんて言葉が出てくる。 主人公は黄泉の国をさまよっているかのよう。
 

『ザ・ベンズ』と『キッド A』の間に位置するアルバムであり、アルバム・ タイトルからも想起されるイメージとしてはその中間期に当たるサ ウンド。しかしここではまだギター・メインでどちらかと言えば『 ザ・ベンズ』寄り。やはり『キッド A』は相当特異なアルバムのようだ。とはいえ『ザ・ベンズ』 が純粋なギター・ロックの極致なら、『OK コンピューター』はそこを更に突き破った新しいギター・ ロックの世界。もう美しいという言葉は妥当ではない。 成層圏のギター・ロックと言っていいだろう。

そのイントロダクションとなる『エアバック』と中盤で曲調が飛躍する『パラノイド・アンドロイド』で得られるカタルシスは格別だ。ここでグッと『OKコンピュータ』の世界に引き込まれてしまう。『レット・ダウン』や『イレクショニアリング』のような伝導率の早い曲もあるが、押しなべて言葉の方はかなり込み入っている。が、僕はそこまで読み込めない。まあ、それでいい。僕はトム・ヨークの言葉は話半分で聞くことにしている。『フィッター・ハッピアー』なんてホント馬鹿馬鹿しい詩だ。物知り顔で分析する類のものじゃないだろう。

そんなことより『ノー・サプライゼズ』のアルペジオを聴いていると此処はどこだか自分は誰だか分からなくなる。そんな風にして思考力が停止した僕はあらゆるものを無条件で受け入れてゆく。そこがユートピアなのかディストピアなのかは分からない。

☆1.エアバッグ
★2.パラノイド・アンドロイド
  3.サブタレニアン・ホームシック・エイリアン
  4.イグジット・ミュージック
  5.レット・ダウン
  6.カーマ・ポリス
  7.フィッター・ハピアー
  8.イレクショニアリング
  9.クライミング・アップ・ザ・ウォールズ
☆10.ノー・サプライゼズ
  11.ラッキー
  12.ザ・トゥーリスト

The Bends/Radiohead 感想レビュー

洋楽レビュー:

『The Bends』(1995) Radiohead
(ザ・ベンズ/レディオヘッド)


レディオヘッドというのは不思議なバンドだ。 陰鬱そうに見えて希望を覗かせるし、 悲痛そうに見えてユーモアをほのめかせるし、 案外悲観的ではなく楽観的な気持ちの方が強いような気もする。 但しそれはあくまでも僕の意見。人によって見方は様々だろう。 しかし彼らの言葉や声、メロディはそれら全てを許容する。 そもそも言葉自身が、メロディ自身が、 サウンド自身が力を持っている、両面を持っているから。 あらゆる見方を全て飲み込んでしまえる度量を持つ音楽こそがロッ ク音楽だとしたら、これは間違いなくロック・アルバムだ。 それにしてもこんなエモーショナルで美しいギター・ ロックにはそうお目にかかれるもんじゃない。

行き場のない言葉。しかし悲痛さとはユーモアを伴うものだ。 美しいメロディ。エモーショナルなギター。トム・ ヨークは人間的でプラスチックな声で歌う。 ひどく感傷的でありながら、 感情に浸れない無機質な手触りの向こうにあるのは正しさ。 それはやはり憂鬱さと不可思議な可笑しみだ。これは死の直前、 スローモーションになるほんの数秒の物語。意識は明瞭となり、 全ては正しく網膜に映写される。

これだけ正しくギター・ロックを奏でてしまったからには、 もう後へは引けない。『キッドA』という被膜をめくると『 OKコンピューター』があり、『OKコンピューター』 という被膜をめくると『ザ・ベンズ』がある。

  1. プラネット・テレックス
  2. ザ・ベンズ
3. ハイ・アンド・ドライ
  4. フェイク・プラスティック・トゥリーズ
  5. ボーンズ
  6. ナイス・ドリーム
☆7. ジャスト(ユー・ドゥー・イット・トゥ・ユアセルフ)
☆8. マイ・アイアン・ラング
  9. ブレットプルーフ…アイ・ウィッシュ・アイ・ワズ
 10. ブラック・スター
 11. サルク
 12. ストリート・スピリット
 13. ハウ・キャン・ユー・ビー・シュアー
 14. キラー・カーズ