休日

ポエトリー:

「休日」

am7:30
 あどけない朝の態度がとても優しい
 心の隙間に潜んでいるものたちの声が聞こえます
 その言葉のひとつやふたつ
 耳たぶに貼り付けて今日は過ごしましょう
 それで困るくらいなら
 今日はおそらく駄目でしょう
 朝から真夏日でクラクラになります
 暑い日のお化粧は体に堪えます

am8:30
 午後からのキャンセル
 致し方ない?それとも人格との戦い?
 もともと気にしてないって言ってあげるわたしは天才
 でも十日も雨が降らないと食べ物が心配
 今はただひたすらあなたを患っていて
 そうだとしても食べ物は心配
 別腹ですから

  am10:00
   いつかの
   耐えきれなかった時間がまた現れる
   今度も
   自分が嫌になるなら黙っているのがよいでしょう
   今度会うときは花束を添えてあなたに届けようと思う
   困らない勇気、あなたはまぁまぁあると思う
 
 am11:30
   今日はいい感じで午後を迎えられそうです
   でも心臓破りの坂は体に悪いから今日はやめておきます
   今は簡単に蛇口をひねって喉を潤すぐらいの気持ち
   いろいろありますが、
   それぐらいの元気はあるようです

ではまた

ポエトリー:

「ではまた」

 

わたしたちの
額に流れる汗
いつもより濃い目のコーヒー

通りに面したカフェで
わたしたちは互いの困難や苛立ちを語り合い
時には大げさに笑いあった

これまでの暮らしがわたしたちに与えたものは
初めから無かったものを無理やりぶら下げるようにして
雨傘や
時には進軍ラッパをかき鳴らし
人々がこうと決めた目的地まで
一目散、声を競ったんだ

見返りに求めたものは何だったのか
見知らぬまま胸ポケットの裏返し
朝昼晩、過不足ない食事を摂り
時折無駄をした痕跡
体のあちこちに歪む意思

もう二度と
交わることはないと知りながら
今日は昨日のこと
明日は今日のこと

わたしたちの
額に流れる汗
いつもより濃い目のコーヒー

無事に過ごせばいいじゃん
通りに面したカフェで
わたしたちは今日も
大げさに笑いあった

 

2022年8月

肌色からベージュへ

ポエトリー:

「肌色からベージュへ」

肌色からベージュへ
わたしたちはひとつの物語に仕舞われることを拒否した

 炎は木からしか生まれない
 その喋り方だと絶えず歯形が付くよ

いつかは思い浮かべる
まぶたの上

わたしたちは選択した
そして時折互いの名前を呼んだ
思い巡らせた後の幾つかで
わたしたちは合致した

人は死んだあと
どれだけそこにいるのか
今はもういないのか
夜明けまでにもいないのか

肌色からベージュへ
まだ誰も起きていない朝の
一番鳥は泣く

 

2022年4月

待つのです

ポエトリー:

「待つのです」

苦しみが
どこにも寄りかかれず足元おぼろ
暗闇の中
あちらこちらへふらついています

今夜ばかりは
春夏物が溢れかえ
しばし心は行方知れず
早くも気持ちが萎えそうです

それでは季節は跨げぬと
こんな夜中に表に出ては
心と体を夜風にさらし
僅かばかりの頭の整理

僕らの知ってる心の声は
もう少し力があればと願うから
つとめて明るい風をよそおいながら
明日の日の出を待つのです

 

2022年6月

運がよければ

ポエトリー:

「運がよければ」

あれだけ辛い思いをしたのだから
時々ドキドキするかもしれないけれど
長い目でみれば
いつかきっと忘れるだろうよ
コップの底が見えるだろうよ

明日になって
新しいことを始めれば
やさしいひとにも出会えるだろうよ
明日になって
天気がよければ
芝生の犬も駆け出すだろうよ

ドキュメンタリー
あとは道なり
前に進む物語
時々ドキドキするかもしれないけれど
運がよければ
大事なひとにも出会えるだろうよ

 

2022年7月

価値ある命

ポエトリー:

「価値ある命」

つまらない事でがんばって
わたしたちの命消費することはない
あなた方がくれたわたしたちの命
今どこら辺り

下らない事で胸張って
わたしたちの命さらすことはない
あなた方がくれたわたしたちの命
涙ぐむ胸の辺り

時々失敗したりするけれど
あなたがいたからここまで来れた
晴れた日の夕立
行き交う数ある形
価値ある命

 

2022年7月

とてもスウィートだ

ポエトリー:

「とてもスウィートだ」

とてもスウィートだ
喉の奥から
赤子のようだ
今はまだ
形は見えない

ある日の晩、
星屑はお庭に落ちて花となり
短い命を終えるんだ

上滑りしていくレコード針が
それでも時を刻み続け
今もあなたを読んでいる

新しく
生まれ落ちるエレジーが
赤子のように産声をあげ
とてもスウィートに
短い夏を終えるんだ

 

2022年6月

戯れ

ポエトリー:

「戯れ」

わたしたちは一歩
足音を早めてる
束の間届いた
夜の戯れ

今夜もあっけなく時は過ぎてゆき
確かに掴み得た想いは
淡い企み
それすら砂

振り向けば
振り出しに
その速度も
足早に

 

2022年7月

助けにいかなくちゃ

ポエトリー:

「助けにいかなくちゃ」

あの子がケガをしている
今すぐ、
助けにいかなくちゃ

わたしたちが目指すのは惑星、太陽、それとも月
いずれにしても
あの子が泣いてちゃ始まらない

人々は雨のち晴れと言うけれど
立ちこめる雲を追い払い
傷薬を用意して
とにもかくにも
今すぐ会いにいかなくちゃ

あの子がケガをしている
人が聞いたら
泣き出すほどの
痛みをこらえて

 

2022年6月

もののはずみ

ポエトリー:

「もののはずみ」

ありもしないものは
はじめからそこにないのだから
なくなったりはしないのに
どこにいったいつなくした
あそこにおいたはずなのに

こにくたらしいかのじょのえがおに
なんどにがむしをかんだかなんて
きどったようにいったとしても
そんなこともあったようななかったような

ありもしないものは
はじめからそこにないとしりつつも
むねぽけっとのたかなりは
なんだったのかとたずねてみれば
それはもののはずみというものですよ

ねぼけまなこのたかなりが
あっちへふらふらこっちへふらふら
ついぞみはてんあなたののぞみは
けっきょくちいさなむねさんずん

さりとてちいさなむねさんずん
ありもしないからはじまるのですよと
わかったようなくちぶりで
それこそもののはずみです

 

2022年3月