ポエトリー:
「大いなる一本道」
月が声に出している大いなる一本道は
人々の罪を暴いたりはしないし
見ず知らずの人を小突いたりもしない
だからこそ今日も私たちの胸は濡れているし
健康的に今朝も寝坊をしたりする
昨日にしても今日にしても
私たちに場違いなことはなく
問題を先伸ばしにしたって傘は
雨が降れば必要になるし傘は
人が思うほど色ちがいではないってこと
隠し立てをしたって糸のほつれからは
何をしたかったかや何ができなかったかが
ありとあらゆる角度から想像できるし
それでも上下左右に連動する体の動きは
以前よりにも増して糸を吐き続けるだろうし
何がしたかったかや何ができなかったということよりも
些細な毎日の流れの細やかなことであったり
そうやって生き抜くこと自体を体全体で表明しようとする私たちの手足は健康的で
だからこそ太陽や月の光は毎日新しい角度で人々の体に射し込むのだろう
今に至っては
正面に回って受け止めることだけが正しいとは限らないし
むしろ太陽や月の光が斜めに走る瞬間こそ大切に
そのことをよくよく心に留め置き
なまじよく動く体を持っていようとも
端から端まで歩みを進める必要はないし
半身に構えようが何しようが
昔馴染みの人に会った時のような柔らかな面持ちで
少しでも多くの時間がほどける時を待ち
昨日あったことや今日あったことを
半年先にはよい意味で忘れるような
それでいて嘘はつかない体
健康的な体であることを願いつつ
今や外は雨あがり
太陽や月の光は熱を帯び
傘立てからは雨がしたたっている
【概要】
月は血を流している
君は罪を犯している
大いなる道は一本の道
私たちの胸は濡れている
特別大きな知らせはなくても
それでも枕元に忍び寄る
そういう噂を耳にして
友達はジャムの蓋をきつく締めた
様々なコンテンツから取り出す
簡易的な欠片は
いかようにも形を変えて
胸に留まり山となる
近代の桃源郷をそれと知るなら
面倒臭いなどと言わず
湿った手を拭うのがよい
その方がよほど健康的だ
そこに点はなく線がある
私たちの心はいつもある程度
湿り気を帯びている
それはとても健康的だ
2023年1月