ポエトリー:
『1+1=』
1+1は窓になる
扉を開けて外見れば
空にまつわる歌を知る
氷は溶けて雨となり
命を育む糸となる
氷はやがて水になり
春を引き込む糸となる
糸が連なるその先の
1+1の二階の窓で
2019年6月
ポエトリー:
『1+1=』
1+1は窓になる
扉を開けて外見れば
空にまつわる歌を知る
氷は溶けて雨となり
命を育む糸となる
氷はやがて水になり
春を引き込む糸となる
糸が連なるその先の
1+1の二階の窓で
2019年6月
ポエトリー:
『お日さん』
太陽をお日さんと呼ぶのは
子供っぽいからではなく
それが私たちの宗教だから
宗教って言うとちょっと重たいけど
お日さんに顔向け出来ないことはしちゃなんめぇってことで
母なる太陽とはよく言ったもの
やましい時は
夜に隠れても
心は落ち着かないものなのです
ポエトリー:
『同級生のS君』
同級生のS君はいつもにこにこしている
遊びの誘いも断らない
昼メシもなんでもいい
テストの点数は抜群に良くないけど抜群に悪くもない
僕らが誰かの悪口を言ってもにこにこ聞いている
僕らがしくじってもにこにこしている
S君は解決してくれないけど
S君は野球部
特別上手くはないけど、なんとはなしにレギュラー
僕たちの草野球にも来てくれる
凄いピッチャーが来てもスコーンとショートの頭を越してしまう
僕たちは感嘆の声を上げる
S君は意見を言わない
その代わり文句も言わない
S君は自分から誘わない
S君にも悩みはあるだろうけど
今はS君が懐かしい
2017年2月
ポエトリー:
『虹の根元』
虹の根元で小さなコビトが手をふるよ
濡れた路面はテレグラム
コビトは明日を占うよ
がぜん元気な声出して
虹の根元に呼び掛ける
こっちは大丈夫だよおぉ
雨は止んだよありがとおおおぉ
2019年4月
ポエトリー:
『昨日の前提』
世界の歴史を
手のひらに集めて
新しくしつらえた
無地のシャツ
長い袖の
早くもところどころ絶え
微かに聞こえる
行進は
新調されたブーツで
やがて微かに
耳も遠くなる
発明家はいつも
正しいとは限らず
新しいものに
手を引かれがち
いつも時間を忘れて
せっせとせがんだ
やつら前傾姿勢だから
短く刈り上げた空は
午前六時の最もよい時間帯
真っ先に扉を開けたのは
行進から今しがた帰った
真新しいブーツでした
真新しいブーツに占められた教室の汚れ
真新しいものとして処理していく
自動的な段階を踏んで
私たちは居場所をしつらえる
馴染んだ影は私たちのものではないけれど
私たちが孕んだモノとして
処理するしかない
配置、
その仕事で明日は塗り替えられる
前代未聞は毎日起きて
まるで昨日の前提だ
2019年8月
ポエトリー:
『明るいところと暗いところが入り混じり』
がらんとした部屋のあるところ
あなたの明るいところと暗いところが入り混じり
近くの問題がとても遠くに感じられました
明るいところと暗いところが交わる時
あなたは剥がれ落ちただの記憶になりました
もぬけの殻
調子っぱずれでこたえるから
右肩を軽くぐるんと持ち上げた
ものにした事柄が
体の奥から定刻通りに抜け出していく
産声が銀河を抜け
ワクチンがひとつ、生まれた
あらかた、
為すべきことは済んだのか
前近代の雨の中
細ばる記憶がまた新しい列車に乗って
地下の帝国へ吸い込まれようとしていました
2019年8月
ポエトリー:
『頭痛』
どんどんと過ぎて行く風景を背に僕の頭は痛い
僕の中心は眼鏡掛けが乗っかる鼻梁
そこを中心に思考は広がる風景は伸びていく
新幹線の鼻先のように風景は左右に広がり
その少し上 額の辺りから中に向かって
伸びていかないものが少しずつ入り込むから
どんどんと過ぎて行く風景を背に僕の頭は少しずつ痛い
2018年1月
ポエトリー:
『語りだす』
一日の最後に
気になる部位が
今日は何も無かったですかと
語りだす
世話のやける女の子の
父親になりたかったという声が
先発した大人の
傷んだ手帳から見つかった
それが叶わぬのなら
盛り場で台所仕事をする
手の荒れた女の人になりたいと
その手帳は続いていた
十代最後の夏
焼けただれた青春が
仁王さまの格好で
門の所に立っていた
私ではないですよと言っても
いっかな怒りは収まらず
怖い目つきは
今日は何もなかったですかと語りだす
だから終いにゃ
酷い言葉のほとんどは嘘だと言った
母との一番の思い出が語りだす
冷蔵庫に麦茶が冷えてるよと言った
母の言葉が語りだす
2019年5月
ポエトリー:
『苦手なこと』
自信のある人が苦手
態度がデカい人が苦手
陰気くさい人が苦手
固形チーズが苦手
チーズ味はもっと苦手
豆乳が苦手
水泳が苦手
あと鉄棒も
聞いたことに答えない人が苦手
知ったように言う人が苦手
完璧かと聞く人が苦手
男前が苦手
綺麗な人が苦手
夜運転するのが苦手
ていうか運転が苦手
高い買い物が苦手
家にある服を思い浮かべて買うのが苦手
クーラーの風が苦手
冬が苦手
怖い人が苦手
コブクロとかGREENとかが苦手
熱がある時に頑張るのが苦手
苦手な事はいくらでも出てくる
でもちょっと面白い
今度は得意な事を考えてみよう
2017年5月
ポエトリー:
『文庫本』
友達に貰った文庫本
読む読むと言って机の隅
引き出しの奥に仕舞うこともできずに
二階の窓から空見上げれば
月は高く
今はもう会わなくなった友達を思い出し
あいつは俺より利口だったけど
今はどんなふうだろうと
そんなことを思いながら
友達に貰った文庫本
今一度目をやり
心の隙間を空白を
沢山の詩で満たして欲しいと
今宵月に話しかけている
2017年2月