春の陽気

ポエトリー:

「春の陽気」

 

帽子を取って走る姿に
いま一度ほれおなす
確かあれは
桜並木
賀茂川のほとり

無尽蔵にこみ上げる
大切に想う気持ち
春の陽気に請われて
減じてしまうよ
まさか、
まさかね

眩しい光線
お願いするよ
そのままどこかへ持ち去らないで

伸び盛りの欲望
ほどなく断ち切る
桜並木
賀茂川のほとり
いつか来た道

 

2021年4月

ナケバ

ポエトリー:

「ナケバ」

 

君のこと やめようと思っても
ついてくる風 なびく稲穂の手引き
その時に夜は 星たちの綱引き
オーエス、
そして大事なこと 言う羽目になる

屏風を立てた日 風はおしろいに乗ってやまびこ
こだまする 幾度も幾度も
肯定する心 内側に秘めたるさしたる願い ありもせず
難しい話なら 夜半にして

毎日でも 少しでも あの人のためならばと心
引き留めて まさかね
無味無臭 無害大敵
どうか無事にやりとげて どうか穏やかに

短いあなた 過去に遡る私
いずれ大切なときが訪れる
そう信じてさえ
雨ニモマケル 凡人の行方
なにが恋しい?
それすらわからない

 

2020年5月

尋ねていた

ポエトリー:

「尋ねていた」

 

くぐり抜けてきた
うまくいかないこと
その多くを
さして支障はない

星を眺めていた
窓が濡れていた
ぶつかり合う星のこと
考えていた

誓いは嘘をつかない
泣き出した日のこと
もうこれからは
忘れたりしない

街の隅では
静まり返った太陽が
古い喉を枯らして
口笛を吹いていた
傍らの犬も共に
喉を鳴らしていた

違いは嘘をつけない
アケビがそっぽを向いていた
ごめんなさいと嵐がただならぬ風を吹かせ
他ならぬ君の横を通りすぎた

気がつけば星は
新しい時代の代謝
いくらかでも信じるがための光、
少し分けてくれまいかと
見知らぬ風をつかまえては
尋ねていた

 

2021年5月

フェスティバル

ポエトリー:

「フェスティバル」

 

音楽に沿って未来を見ていくことは美しいこと
絵画を捉えて、こころは穏やか
新しいことを始めるには
まずは絵筆を整え形から

パレットに絵の具を垂らして
五線譜の行方、新しい助走
音楽は始まっているね
そうだね、わたしたちも今から行こうかね

筋肉は付かない
大きな公園へむかって
黄色のバケツを持ってみんな集まりだす
七色のフェスティバルのはじまりだ
僕たちのフェスティバルのはじまりだ

 

2021年5月

タペストリー

ポエトリー:

「タペストリー」

しあわせ折れる
ふしあわせ 綴れおり
タペストリー 仕舞い込んで
しわは褪せ 踊る

瞼の上 大げさな太陽
染み込んでは 一度に吐き出す
ぐらいのまね してみるんだお前
吐かなかったろ ゆうべ

めぐり合わせ ていうものがこの世にあるなら
次第に遠ざかる太陽 次に現れるの
いつになるん
たるんだ瞼 一度に吐き出してみるんだ

間違っても 思い通りにならない
珍しい生き物飼って 
それで手痺れる

写実な実験を課す
生え際から もらい泣きする輩
もらいなさい
適度にもらいなさい

小細工や小癪な真似通して
うろ覚えの手、握る
徹頭徹尾 私たちが選んだ人生の荒縄
ほどく手指抗うほど伸びやかな
強く引き締めた手綱

マグネットコーティングされた機体を
白熱する有機体を
混ざれ 混ざるな
生ぬるいかんしゃく玉を
はじけ はじけるな

十年くらい前の気持ち ここに集めて
おかわりする気持ち たしなめてください
第一発見者になる能力 ささやかな憂鬱
位置情報で確かめてください

今はどこだか分からぬまま塞ぎ込んで
ふしあわせ 指折り数えました
タペストリー 全部折り
ミリ単位で
つなぎ留める

2021年4月

共感

ポエトリー:

「共感」

 

君によせた共感の
ほんの一ミリでもちゃんと伝わっていればいいのに
君の傾きを少しでも思い止まらせることができたらいいのに
なんて
夜の無責任
はな紙みたい

 

2021年3月

輪廻

ポエトリー:

「輪廻」

 

支えられる輪廻
ふた口めをスプーンにすくう
ぼくに出来ること
きみへの目覚め

少しおどかしてほしい
可愛らしいまつ毛におどる
台風のようなひとみ
渦の真ん中には一点
支えられる輪廻

向かわせてほしい
川は流れず吹きこぼれる
スプーンに三口めをすくう
音がして君のうちへ入る

 

2021年1月

ポエトリー:

『線』

会いたくなると 凍えるの 吹きだまり 水色の 当てもない交差点 見上げれば ほら みんなが知っている水色 空 それなのに 頑なに こらえる心と体が一致する 夕刻まで待てないと あなたも一緒でしょ 一瞬で 夕闇にうっとりする人 もがき苦しむほど 場違いなはらわた 煮えくり返り おまえのせいだ おまえのせいだ とせっつく 軽く口止めする 輩 柔な瞳につっかえて 今晩のおかずは スーパーに立ち寄る秘密 冗談でいいから コロッケひとつ おまけしてください 真面目に話しかけると スーパーの店員の笑顔を鳴らし それでも雲の形は 変わらない もしくは変われない 水溜まり それを写す鏡 水色の空を見下ろし 派手に歪んだ似姿が ぼんやりと海の彼方へ あなたの方へ 帰りたい 帰りたいのと呟く 私の色は かまわないで足踏み 見上げれば 当てもない交差点 苦手な骨格が現れる 私の線がそこにある

2021年2月

シグナルは黄緑

ポエトリー:

「シグナルは黄緑」

 

昨日には 春の嵐が吹き溜まり
黄緑の 花びら装束買いに行く
太陽を遮る手のひらに昇る稜線

気取っていた 似合わないシャツに着替え
日溜まりの光線 夏に浴び
気付いてた 指折る日毎に傷付いていた

外面をぶら下げ靡くお堀端
手のひら繁る黄緑シグナル
蓄えたものが今にも無くなる

秋にはなんだか後ろめたく
後ろの席でずっと、眺めたい
今すぐ始めたい
いい加減にしておくれ
この湯加減は止めにしておくれ

今再び、手のひらの稜線が 行けと言う
もう二度と お前たちの世話にはならないと
春の引き戸、怯える気持ち
私たちどうか無事に、
新しい地球の歩き方 始めます

 

2稿 2021年3月31日