ポエトリー:
『月にかさねる』
ベッドから少し起き上がって今見た夢の続きをスケッチする
クロッキー帳は煤で真っ黒だ
シーツの重みを身体全体で感じる
今夜も食事が運ばれてきたから
動脈を流れるその栄養源が思い出を塞がないよう
少しずつ噛み砕いて口にする
最も大事なものはずっとその奥
私だけの隠れ家にある
もう随分と大変な思いをしてきたけれど
これからもまだ何か起きるのだろうか
案外、何も起こらないかもしれない
窓の外には月
銀のスプーンに心をのせて
そっと月にあてがう
少し離れた通りから君の家を見ている
君の魂はまだ其処にいる
心を感じる
二人の距離は削り取られたかのように
今なんてほら、至近距離だ
人生なんてそのようなもの
月に向かって吠えてみる
大声を出して
運動会の小学生のように正直に
十月のアキアカネのようにせわしなく
今宵、月と君に向かって心を重ねる
人の形をしていようがいまいが関係ない
大切なのは今ここに起きている事実
私たちは今、真円を描いている
2017年1月