ポエトリー:
『秋の庭』
お手玉をして変わり果てたあの人の肢体に
虫眼鏡を当てた
晩御飯の残り物みたいに昨日の湯気がうっすらと浮かび上がり
その向かいにあるグラスの淵
唇の形が凝視する
朝晩は冷えるから上着を持って行きなさい
おせっかいだほんとにもう
蛍光灯ひとつ
白が気に入らないからオレンジ
オレンジが気に入らないからLED
何のために何を変える?
黙って従うべき言葉も無いまま代わりに
集合写真のような柔らかさで
主人の居ない一戸建ての奥の部屋
慰めてが木霊する
笑っているのは置き忘れた夏の簾で
元気よく泣く赤ちゃんのようにそこだけ立体的
冷たいご飯を温めたりしないで
鉛筆は尖らせないで
辛抱に辛抱を重ね
秋の庭
虫が泣く代わりに猫が泣く
耳障りな音、道路を横切る銅線のようにぶら下がり
それも黒い服を着た今の私なら
簡単に引き摺り下ろせる
2017年9月