HAYABUSA JET Ⅱ / 佐野元春 感想レビュー

『HAYABUSA JET Ⅱ』(2025年)
 
 
正直、『Ⅱ』があると聞いた時、僕はもういいだろうと思った。実際にリリースされて聴いてみると、確かにCoyote Bandらしくギターが騒がしく鳴る『君を想えば』、ダンスチューンに変貌した『太陽』、全く別物と言っていい『吠える』など、楽しい再定義はあった。けれど『Ⅱ』でもあり新鮮味は薄れていたし、『Ⅰ』ほどの興奮はなかった。僕の印象が変わったのはスピーカーで聴いてからだった。
 
『The Circle』(1994年)でThe Heartlandを解散したように、『The Sun』(2003年)を最後にThe Hobo King Bandでの新作が途絶えたように、2023年の『今、何処』以降Coyote Bandでの活動は活発ではなくなるのではないかと僕は勝手に想像していた。それぐらい『今、何処』アルバムは圧倒的だったし、上記2つのバンドの時のようにピークを迎えた後のCoyote Band としても次へ向かう道を見つけるのは難しいだろうなと勝手に思ってていた。
 
『HAYABUSA JET』シリーズは佐野自身が何度も語っていたように、佐野を知らない新しい世代に対するプレゼンテーションが主な目的だったろうし、『Ⅰ』は全くそのとおりだったと思う。しかし結局それはCoyote Band との関係をリフレッシュさせることにもなり、計算通りだったのかどうかは分からないけど、『Ⅱ』での更なるCoyote Band仕様への振り切りようを思えば、 ざっくり言ってしまえばそうした勘が当初から働いていたのだと思う。
 
つまり今回の『HAYABUSA JET Ⅱ』はまだまだCoyote Bandとの活動を終えるつもりはないという佐野の宣言なのではと僕は感じ始めている。今のバンドでこれ以上望むべくもないと思える作品があったとしても、かつてのように活動をやめてしまう必要はない。その答えが『HAYABUSA JET』シリーズ、いや『Ⅱ』にあるのかもしれないと。
 
イヤホンで聴くのをやめ、スピーカーで可能なそれなりの音量で聴いた時、それはまさしくCoyote Bandだった。過去曲に手を加えましたではなく、大袈裟に言うとライブを全身で浴びるようだった。当たり前だけど、The HeartlandでもないThe Hobo King BandでもないCoyote Bandとしか言いようがないサウンド。もしかしたら『Ⅰ』は新しい世代にという主眼が強く、曲そのものの若さを維持することに気が向けられていた部分があったのかもしれない。しかし『Ⅱ』ではそこはもう完全に吹っ切られているような気がした。Coyote Bandフルスロットルで行くんだと。
 
およそ1年をかけて行われた45周年を冠した一連の活動もまもなく終わる。次のアルバムがいつになるかは分からない。でも作り手にも僕たち聴き手にももうあの『今、何処』を越えなくては、という余計な気負いはすっかり剥がれているような気がする。あれはあれ、次は次、とばかりに。『HAYABUSA JET Ⅱ』はそういう役割を果たしたのではないか。
 
この一年の活動でおなか一杯になったコヨーテ達はしばしの休息に入るかもしれない。けどいずれ腹を空かせる。僕は気長に待とうと思う。キャリアの終盤にさしかかった佐野がCoyote Bandとともに再び走り出すのを。

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