Double Infinity / Big Thief 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『Double Infinity』(2025年)Big Thief
(ビッグ・シーフ/ダブル・インフィニティ)
 
 

聴き始めた時から良い印象があって、リラックス出来るし通勤時などによく聴いていたのだが、このアルバムのどこをどう気に入っているのかわからないまま時間が過ぎていった。そのうちビッグ・シーフってどんなバンドだったっけと改めてわからなくなり、そうだ、過去作を聴いてみようと思い、『U.F.O.F.』(2019年)、『Two Hands.』(2019年)、『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』(2022年)と何日かに分けて聴いてみることにした。

 
聴いてると、この辺はいわゆる出世作でもあるので、やはりエネルギーが充溢している。尖ってて聴く方も大変だったってことを思い出した。でも時間の経過とともにそれが和らいでくるのがわかる。『Dragon New Warm ~』なんてその両方があってすごい作品。僕はなんで年間ベストにしなかったんだろう。てことで、今回のアルバムはひと区切りついたビッグ・シーフの新しいフェーズ、という認識が僕の中で出来ていた。つまり、もうあんな尖ってないだろう、というイメージ。
 
なので聴く前からリラックスしていた。そして聴いたら、まるっきり予想通りの雰囲気だった。曲がいい。レンカーは多作な人で、『Dragon New Warm ~』と今作の間にソロ作を出している。ソングライティングが日常なんだと思う。そんな中での選りすぐり。名作を作ってやろうという気負いもない(多分)。だけど、バンドにはこれまでの作品でスパークさせたクリエイティビティが宿っている。本作は何気ない歌のアルバムだと思うけど、そんな連中が作った作品が一筋縄でいくはずがない。
 
前半と後半にリード曲となるようなポップな曲があって、中盤はゆったりとした印象。でもそのゆったりとした中盤は、なんでこの人数でこういう音出せるんだという惚れぼれとするグルーヴ。そして決定的なのはその後に続く#8『Happy With You』。延々「happy with you」と「poison shame」というリリックを繰り返すだけなのになんかもうもの凄く名曲!なんなんだこの人たちは!
 
いろいろ調べてると、レコーディングが上手くいかなくて、やり直したなんていう記事があった。肩肘張らずにサッと作ったのかなと思ったら全く違ってたけど、出来た作品は肩肘張っていない。聴く方も心構えが要らない。批評的には前の3つのアルバムの方が断然高いのだろうけど、僕はこっちの方が好きだ。