ポエトリー:
「忘れたらごめんなさい」
朝早く、ほうぼうからトングを手にした人々が集まる。品定めして、名物の大きめのクロワッサンから売れていく。今朝思いついたことは噛りかけ。できることは今ないです。
ここまで来ることができたのは、スピードに乗って空を仰いだことがあるからで、たとえこんな日でも、何にしようかと迷うのことの方が、大事だと思ったから
けれどそのスピードとは裏腹に、トングは大きめのクロワッサンすら掴めずに、手首から先はほどなく、恋しくなるほどふがいなく、記録も何も残らない。
帰り道の商店街を過ぎた辺りから、不意にロケットにでも乗って何処かへ行きたい気分がして、でもそれが望めないから、せめて通りの向こうの高台へジャンプする、気持ち。雲の水分をひと煮立ちして蒸発させれば、水素ロケットぐらい作れるのじゃないか、そんな気持ちで。
パン屋で焼かれる大きめのクロワッサンと普通のクロワッサン。手間はどちらがどうでどちらを多く焼くのだろう。などと思いながら、注文した食パン一斤分ならトングは使わなくていいから大丈夫、たぶん夕方には取りに行ける。
そのままでも美味しいし、ベーコンやトマトをはさんだらもっと美味しいことを想像して、でも夕方にはまだだいぶ時間があるし、午後からはお客さんが来るから、パン屋の皆さん、うっかり忘れたらごめんなさい
2025年4月