ポエトリー:
「海へ」
あからさまに物言うことがなくなってきた
ひどいことばに打ちのめされることも
夕焼けは夕闇に吸い込まれ帰るべくして帰る
それが自然なことだと知ったのは
物言わぬ生に気づいたからかもしれない
変わり果てた銘柄の
名のある様式がプラスチックゴミとともに
プカプカと浮かんでいる
その様子を描くことをわたしのパレットはゆるさない
その絵具は誰ひとり不平は言わないけど
ゆるさないこととゆるすことの間に漂う棒切れのような営みを
駆け寄って奪い合うほどの熱意が
今の私にはもうない
ただだからといって素知らぬふりなどできぬ意気地のない身体は
漂うプラスチックゴミと時を同じくして
戯れに点描の彼方を見やることで
己の均衡を保っている
背広の襟がたわむようにして沖へ
もう無理だと先を急ぐ群れにわたしはたったひとりでジャンプする
水飛沫あげる海
2025年6月