『This Cloud Be Texas』(2024年)English Teacher
(ディス・クラウド・ビィ・テキサス/イングリッシュ・ ティーチャー)
ここ数年、英国から新鮮なロック・バンドが登場しているけど、 割とマニアックな音楽性に振れている部分はあった。 それはそれで個性的なんだけど一般的なところにまで手が届くかと いうとちょっと厳しかったのも事実。その点、 このバンドは技量に長けてるけど、 間口が広くてテクニカルなところに流れていかない。 バンド名もふざけてていい。
リリックがシンプルなのもいい。 単にフレーズを置いていくだけであとはそっちで考えて、 っていうツンデレ系ではあるけど、 とてもポエトリーとして機能している。#3「Broken Biscuits」や#4「I’m Not Crying,You’re Crying」の似たようなフレーズを延々繰り返すカッコよさ。 ボーカルも肝で基本リーディングでメロディーに乗せて歌うという 感じではないのだが、 リーディングのくせに跳ねるように歌っていやがる。 このリズム感とか呼吸の入れ方とかは相当スゴイ。 新種の才能と言ってよいのではないか。
ということでポエトリー・リーディングではあるけど、 一向にだれてこない。ていうか、 いろんなパターンがあってどの曲もめっちゃ楽しいぞ! それを下支えしているのは冒頭に述べたテクニカルなバンド。 転調はあるし、プログレのような意表を突く展開を見せるし、 バロック調のものある。けどあくまでもポップで楽しく。#8「 R&B」や#9「Nearly Daffodils」 のベースでリードしながらグイグイスピード上げていく辺りはめち ゃくちゃカッコいい。かと思えば、#11「You Blister My Paint」のようなビリー・ アイリッシュぽいスローソングで歌い上げたりする。ホント、 楽しませてくれる。曲間が短いのもいいなぁ。
心配なのはこのアルバムのテクニカルだけどシンプルな明るさが今 後も維持されるかという点。 このやったった感は初期衝動にだからこそなし得たのか、 それとも次もこの路線で屈託なくやっちゃうのか。 いずれにしても今後に期待させるバンドの登場だ。