洋楽レビュー:
『Don’t Forget Me』(2024年)Maggie Rogers
(ドント・フォゲット・ミー/マギー・ロジャース)
なんだこの説得力のある声は。まだ3枚目、 このアルバム時点で30才ということらしいけど、 貫禄があるなぁ。米国のシンガーソングライターであり、 プロデュースも自身で手掛けている。 曲といいサウンドといい派手なところはないが、 実は相当な才人かもしれない。何気なさが逆にスゴイ。
とはいえメロディーラインは少し上の世代の影響も感じられ、 1曲目「It Was Coming All Along」はテイラー・スウィフトぽいし、2曲目「 Drunk」や3曲目「So Sick Of Dreaming」なんかはもろハイムのダニエル・ ハイムが作ったんじゃないかと思うほど。 つまり基本的には伝統的なスタイルの曲作りということのようだ。 テイラーにもハイムにも米国ソングライターの系譜が感じられるが 、マギー・ロジャースのその連なりだ。
ただそれだけで特別なアルバムを作れるということではなくて、 今の時代に沿ったサウンド・デザインも必要。 今回で言うとオーソドックスなバンド・ サウンドによりオーガニックな米国ロックらしさを前面に出してい る。このアルバムがとても良かったので、前作『 Surrender』(2022年)も聴いてみたらビックリ、 そっちは一転シンセポップ風。 それはそれで聴きごたえのある仕上がりになっているので、 単純に何をするにしても目端の利く器用なタイプなのだろう。 コーラス・ワークも見事だし、総じてレベルは高い。
逆に言うと得意技がなく、 なかなか一点突破はしにくいのかもしれないけど、 これからも安定的に素晴らしい音楽が聴けそう。 個人的には彼女の力強い声は、 全体的にキーが高めになるシンセポップより今回のようなバンド・ サウンドが合うと思うけど、 まだまだ若いからいろいろなことにチャレンジしていくのだろう。 またひとり、気になるアーティストが増えた。