Month: 6月 2024
片手で測ってしまえれば
ポエトリー:
「片手で測ってしまえれば」
長い運河の成れの果てで
片手で測れる音を聞く
その景色を十分毎に刻み
アニメーションにして語るほどの語彙はあるのかと
急に濁流になるくだり
そこはスナップショットにして
あぁ、そういうことあったよねと
肩の荷を降ろし
向かい合った片方のレンズ
そう、対角線になって
覗くとほら
騙されたような気分になって
一瞬でスカッとするのさ
いわゆるその類いのスピード
コマ送りにするまでもなく全部が全部
窓ガラスにへばり付いた結露と一緒に
サッーと落ちてゆく
それを内気と外気の温度差と言い換えていい
いい、いい、
もう焼きつけたから全部それでいい
長い運河の成れの果て
後になってからででも
片手で測ってしまえれば
2024年2月
こんな夜に
ポエトリー:
「こんな夜に」
こんな夜に
あなたにおねだりしたいことは
グミ、あるいはチョコ
それともなんのことばだろう
やわらかい海の耳鳴り
その浮き沈みに合わせるように呼吸をすると
静かにしないでもちゃんと聞き分けられる
こんな夜に
目ぼしい魚をひとつひとつ
うお座でなくても空にあて
新しいものでも見つけたように
興奮するひととき
珍しいことにあなたもぼくに合わせてくれて
あれでもない、これでもないと
短いけどそんな交信
あったような気がした
接近する光線に手をかざすあなたが
ガラス戸に映って
出たり入ったりするあいだ
ぼくはこんなにも湿っぽい面してる
でもその場からは
けっして逃げ出したりしないように
健康的な湯上がりのような
正当防衛する体がほしい
こんな夜に
あなたにおねだりしたいこと
グミ、あるいはチョコ
甘いもので心を浸すことができるなら
今はもうそれで満足です
2024年4月
Inevitable Incredible / Kelly Jones 感想レビュー
海のしずく
ポエトリー:
「海のしずく」
ぼくに遺された
海のしずく
貝殻に
耳をすます
音に聞く
昔の人の生業が
長い四季を繰り返し
無理なことから流れていく
確かゆうべは砂浜で
変わり変わらぬ唄を思い浮かべ
静かな夜気を楽しんでいました
夢の中で
置いてある誘導灯が
最初からそこになかったような顔をして意地悪をする夜がある
初めからそこになかったような顔をして
あの子はいつもぼくをかき回す
遺った手ざわりがすっぽりとしまわれた貝殻に
いつまでも海の斑点が続く
2024年4月