洋楽レビュー:
『My Soft Machine』(2023年)Arlo Parks
(マイ・ソフト・マシーン/アーロ・パークス)
2021年のデビュー・アルバムでいきなりブレイクした英国のシンガーの2nd。僕も割と好きですが、正直どこがどういいっていうのはなかなか難しい人ですね。一言で言うと雰囲気がいいということになるのかもしれませんね。あいまいな言い方ですが。
それとこれは恐らくですが、歌詞がやっぱり共感を集めるそれなのだと思います。僕はそこまで英語を理解できませんが、彼女はセクシャルマイノリティでもあるし、そこのところの言及も勿論あるのですが、ただそういった部分が強めに出てくるということではなく、ごく普通の20代前半の女性の等身大の悩みと直結するような表現に落とし込んでいるというところがね、元々詩を読むのも書くのも好きだという傾向もあるせいか、自身のことを書いていても俯瞰でみんなの物語として書けるっていう、ここは自覚的にそうなのかどうかは知りませんが、そういう才能はあるのだと思います。
あとやっぱり雰囲気がいいと言いましたが、聴いててすごく心地いいですね。彼女の声、なんて表現したらいいのか分かりませんが、単に愛らしいということではなく、やっぱりここも自分自身を前面にということではなく、何かフワフワとした実存の無さというか、つまり優しさというか、私の歌を聴いてよではなく、この歌を必要な人に向かって歌うという感じはあります。
今回は時流に沿ってかロックな表現も多いです。特徴的なのは#3『Devotion』ですね。ベースが引っ張っていって間奏でギターをギュイーンと鳴らすみたいな。全体としてはプログラミングによるサウンドだと思うのですが、この曲とかもそうですし、バンドで音を出しているのも何曲かありそうですね。#7『Pegasus』ではフィービー・ブリジャーズも参加してますし、ロック方面への接近は感じますね。ただこの辺はその時々の傾向によるのだと思いますし、全体としての印象は前作とさほど乖離するほどではないです。
ところで歌詞は本人なんでしょうけど、曲はどうなんでしょう。ここのところがちょっと分かりませんね。曲も彼女が手掛けているとしたら、これは相当なものだと思います。