日曜美術館『ホリ・ヒロシ 人形風姿火伝』感想

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Eテレ 日曜美術館『ホリ・ヒロシ 人形風姿火伝』感想
 
 
録画したままになっていたんですけど、昨日ようやく観まして。日美は時々、一人の作家の創作ドキュメンタリー的なこともやっているんですが、こういうのはやっぱり興味深いですよね。
 
作家が何をきっかけにしてどういう経緯でものを作っていくのかというのは、極端な言い方をすれば、芸術家は誰かに頼まれてものを作ってるわけでもないわけですから、何が彼彼女らにそうさせるのか、そこは恐らく最も大事な部分、本質かもしれないわけですし、僕のような凡人は単純にそこに興味があります。
 
失礼ながら、個人的にはあまり興味のあるテーマではなかったんですけど、見ているうちにどんどんと引き込まれていきました。人形師であり舞踊家でもあるホリ・ヒロシさん。20才以上年の離れた共作者でもある妻の堀舞位子さんの存在が非常に大きかったそうで、その彼女に先立たれたことで道に迷うというか、創作に気持ちが向かわない時期があったようです。
 
番組はホリさんが再び創作へ向かう様を映じるのですが、いなくなっても常に舞位子さんの存在がそこにある、彼女なしでは考えられないホリさんというものが浮かび上がります。ですので、ホリさん自身は揺れに揺れているというか、それでも舞位子さんに導かれるようにして創作を進めていく、そんな姿が映し出されています。
 
番組の最後、釈迦の生母である摩耶をモデルにした人形「MAYA」を完成させたホリさんは仲間と共にステージで人形舞を披露します。そしてその後、ホリさんは完成したその人形を、そこには舞位子さんが所有していたストールなんかも衣装として巻かれていたんですけど、事もなげに燃やしてしまう。舞位子さんは死んだら空中に撒いて欲しいという希望があったので、それに沿うような形で燃やしてしまいます。通常であれば、番組はここで終わり。けれど、最後に予想外の展開が待っていました。
 
ホリさんは燃えて煤けた人形の頭部に再び彩色を始めるのです。それも左半分は焦げたまま、右半分にだけ彩色をする。その彩色も一度焦げた上からですし、そこには作家の狂気がある!この人形の凄まじさといったら僕は思わず声を上げておののいてしまいました。
 
それまで舞位子さんに導かれていたホリさんの本質がここで一気にあらわになる。舞位子さんとは別個のホリさん個人としての、芸術家としてのエゴがここで一気に湧出してくる。これはもう狂気ですよね。番組の最後の1~2分のことでしたけど、それまでが全て前フリであったかのような強烈な瞬間がそこにありました。ホリさんの本質がそこに垣間見えたような気がしました。
 

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