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Eテレ『日曜美術館 秋野亥佐牟 辺境の向こう側を見た男』感想
勿論上手い下手はあると思うけど、前に出てくるのは描く人のエネルギーなんだと。絵を描くということ、そこの突端に全エネルギーを集中して描く。絵を見て圧倒されるのはやっぱり作者のエネルギーだ。
秋野亥佐牟(アキノイサム)さんはただ絵を描くのが得意なだけではなく、生きていくエネルギーに溢れた人で、世界中を旅したり石垣島で暮らしたりと、サバイバルしていく生活力にも長けた人。単純に体力がすさまじい。
若い頃はそのエネルギーを持てあまして、学生運動とか命を落としてもおかしくないところまでいったようだけど、ただそのエネルギーの持っていく先を見つけた、そのきっかけが日本画家でもあった母親であったというのは感動的だ。
その母とのインドへの旅で秋野亥佐牟さんは生きる道を見出だす訳だけど、それは人本来の生き方をするというもので、でその先に絵というものがあったということ。
ここはやはり天与の才というか、芸大に入って中退してっていうことがさらっと述べられていて、下地として既に絵を描く能力が備わっていた、加えて両親が著名な画家で経済的なあれこれを考える必要がなかったというのも大きいだろうし、こんなことを言うと身も蓋もないけど、生活を先ず考えなくても良かった、その前にやりたいことを出来る環境が才能も含めてあったということは事実だろうし、勿論その前提として人間力というか秋野亥佐牟さん自身の生きる力、圧倒的な前への推進力とポジティビティがあったんだと思う。
今もそのまま残されたアトリエには200を超える未発表作があって、膨大な文章も残しているし、何より腕が走って仕方がないというような作品の数々。溢れ出して仕方がないというような想像力があって、やはりこの人の体の中にはマグマのようなエネルギーが沸き立っていたんだなと思います。
番組に登場された奥さんやご子息、義妹さんたちの清々しさや聡明さを見ていると、その向こうに秋野亥佐牟さんが見えるような、息せききって旅をして、石垣島で海人になって、なったはいいものの魚を獲ることは二の次でそれでも地元の海人に愛されて、自分で建てた家のアトリエで静かに絵を描いている秋野亥佐牟さんがいるような、そんな気がしました。
兵庫県上郡町やたつの市へいつか訪れてみたいと思いました。