ポエトリー:
『語りだす』
一日の最後に
気になる部位が
今日は何も無かったですかと
語りだす
世話のやける女の子の
父親になりたかったという声が
先発した大人の
傷んだ手帳から見つかった
それが叶わぬのなら
盛り場で台所仕事をする
手の荒れた女の人になりたいと
その手帳は続いていた
十代最後の夏
焼けただれた青春が
仁王さまの格好で
門の所に立っていた
私ではないですよと言っても
いっかな怒りは収まらず
怖い目つきは
今日は何もなかったですかと語りだす
だから終いにゃ
酷い言葉のほとんどは嘘だと言った
母との一番の思い出が語りだす
冷蔵庫に麦茶が冷えてるよと言った
母の言葉が語りだす
2019年5月