新版画展 美しき日本の風景 美術館「えき」KYOTO 感想その①

アート・シーン:

新版画展 美しき日本の風景 美術館「えき」KYOTO 感想その①

 

JR京都伊勢丹にある美術館「えき」で開催されていた展覧会、「新版画展 美しき日本の風景」に行って参りました。新版画と言われてもピンと来ないかもしれませんが、要するに新しい版画のことです。ハイ、そのまんまですね(笑)。

版画と聞いて思い浮かぶのは浮世絵。浮世絵は江戸時代に盛隆を迎える訳ですが、明治になる頃には写真の登場や印刷技術の進歩もあって衰退してしまいます。しかしその頃、横浜で貿易に携わっていた渡邊庄三郎という方が海外向けに浮世絵がジャンジャン輸出される様子を見て、こりゃ商売になるんじゃねぇかって独立します。そうです、当時はヨーロッパでジャポニズムが一大ブームにだったんですね。で、渡邊庄三郎は版元になるわけです。

基本的に版画というのは画家と彫師と刷師による分業です。それらの版元ということは要するに今で言う総合プロデューサーですね。画家達を集めて工房を立ち上げる。資金繰りもして販売もする。と言っても版画は衰退していたわけですから、手を挙げてくれる人なんてそうはいません。そこを駆け回って版画をもう一度再興させたのですから余り知られてはいないですが、庄三郎さんて方、実は大層凄い方なのです。なんて偉そうに言ってますが、僕もこの展覧会を通じて初めて知った口です(笑)。ちなみにその庄三郎さんの生涯を追った書籍に「最後の版元」というものがあるそうです。一度読んでみたいですね。

で、庄三郎さん、どうせやるなら新しい版画を目指そうじゃないかって、江戸時代の浮世絵を進化させた版画を目指します。それが新版画です。その新版画、展覧会を見た僕の印象では、まず写実ですね。浮世絵ってほら、美人画とか役者絵ってバランス悪いじゃないですか、目や鼻がちょんちょんで。手、ちっちゃいし(笑)。

それと遠近感。広重の東海道五十三次を思い浮かべてもらえば分かると思いますが、浮世絵の遠近感って凄く独創的ですよね。それが海外の人には斬新だ!って受けた訳だけど、新版画はそうじゃなくて西洋の印象派のように実際に見た風景を写真のように切り取ろうとします。します、って言ってますけど版画ですからね(笑)。相当無茶なわけです。それをやろうとしたんですから、もう笑うしかない。プロジェクトXです(笑)。だから見ていると熱量がね、半端なく伝わってきます。中には96回も色を摺った作品もあって、それはもう画家と彫師と刷師の熱意を思わずにはいられないのです。

~感想その②へ続く~

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)