Star Wars/wilco 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Star Wars』(2015)wilco
(スター・ウォーズ/ウィルコ)

 

ウィルコ、通算10枚目のスタジオ・アルバム。前作から4年ぶりということでデビュー以来コンスタントにアルバムをリリースしてきたウィルコにしては随分と長いインターバル。前作の大ボリューム作からは一転してコンパクトなアルバムだけど、これが結構キャッチー。ん?キャッチーか?と疑わしげな方もいらっしゃると思いますが、いやいや、何度も聴いてると確かに派手さは無いですが粒ぞろいの良曲ばかり。僕はウィルコ史上でもかなりポップなアルバムだと思います。

と言っても世間一般で言うポップとはちょっと異なるのがウィルコならではというか。それを端的に表すのがアルバム・タイトルで、ちょうど2015年というと映画『スター・ウォーズ』の新作が久しぶりに公開されるって時期で随分と盛り上がってたんだけど、そこに『スター・ウォーズ』ってアルバム・タイトルを持ってくるこのセンス。冗談か本気かよく分からないこの感じがまたウィルコらしくていいというか、そのくせアルバム・ジャケットがどっかのお金持ちの家に飾ってあるような猫の絵っていう訳の分からなさ(笑)。この人を食ったようなポップネスこそがこのアルバムのポップネスですと言うと、なんとなく分かってもらえるだろうか。

ウィルコが一躍有名になったのは2002年の『ヤンキ-・ホテル・フォックストロット』というアルバムでノイズの混じった実験的なサウンドだったんだけど、今回は割とそれに近いというか、歪んだギターやサイケデリアなどトリッキーなサウンドが展開されている。前作、前々作の(ウィルコにしては)割とオーソドックスなサウンドのアルバムとは違い、変態的なサウンドが復活しているので、早速1曲目からニヤニヤしているウィルコのファンもいるんじゃないでしょうか。

その1曲目『EKG』はネルス・クラインを筆頭にした変則的なギター・サウンドがリードするインストルメンタル。そこに呼応するベースとドラムのリズム隊のうねり具合がまた最高です。3曲目の『ランダム・ネーム・ジェネレイター』でもアップテンポな曲をギターが引っ張っていくし、8曲目の『ウェア・ドゥ・アイ・ビギン』のようにギターとボーカルのみで進んでいく曲もあったりするので、このアルバムはひょっとしてギター・アルバムと言ってもいいのかもしれない。ウィルコはボーカルのジェフ・トゥイーディを含めたギタリスト3人体制だからギター・バンドといえばそうかもしれないけど、ここまでギターがドライブしていくってのも珍しいかも。穏やかなジェフの歌心に鬼才ネルスのおかしなギターが割り込んでくる違和感はいつもながら最高です。そういやレディオヘッドもギタリスト3人で、ジョニー・グリーンウッドっていうぶっ飛んだギタリストがいる。出てくるものは全然違うけど、何か急に近しいものを感じてきたぞ。

今回のアルバムは#5『ユー・サテライト』を除いて全て2、3分で終わる。全体としてサッと始まりサッと終わる印象だ。#3『ランダム・ネーム・ジェネレイター』や#7『ピクルド・ジンジャー』のようなスピード感もカッコイイけど、今回の山場は後半に続くスローな曲群。ジェフのぼそっとした声が穏やかなメロディと上手く溶け合ってて綺麗だ。バンドの演奏がそこに寄せてこないからこそのちょっとしたぎこちなさがかえって心地いい。やっぱ不思議なバンドだ。

 

1. EKG
2. More…
3. Random Name Generator
4. The Joke Explained
5. You Satellite
6. Taste the Ceiling
7. Pickled Ginger
8. Where Do I Begin
9. Cold Slope
10.King Of You
11.Magnetized

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