ポエトリー:
『ハンモック』
大きなハンモックの上で世界の悪意が揺れている。
買い物帰りのハンナはレモンを掴む前までの苛立ちは全て机の向こうに、鉛筆やらコピー用紙だかを押しやるように滑らせ、今夜の夕食の支度を始める。時を同じく、夕方のニュースが目の前を横切る。玉ねぎは細かく刻んだ方がいい。
日付が変わる前にアパートに辿り着いたジョーは帰りがけに買った週刊誌のページを繰る。声を立てて笑った約1秒後、ゴミ箱へ丸めた。思わずソファを蹴りあげたくもなるが電話が呼んでいる。お誕生日おめでとう。
南の島の小さな岬には樫の木があり、そこは子供たちの目印だ。今はお昼の真っ只中。大忙しの奥さん連中の頭の中は来週に迫った村の選挙にかかりっきりだ。彼女たちは海に放射能が流れていることを知らない。
8月の朝、前の日に南半球での病が終息したとのニュースがあった。今日は土曜日、シンイチは表に出て子供たちの靴を洗う。新鮮な空気に独り言を放り込み、向こうでは今は冬なんだと、当たり前の事を思う。何処にいても朝は朝の空気があればいい。まして高望みではないだろう。
2014月11月