洋楽レビュー:
デイヴ・マシューズ・バンドをご存じ?
デイヴ・マシューズ・バンド(Dave Matthews Band)をご存知でしょうか?1991年に結成された米国のバンドです。日本では殆ど知られておりませんが、米国では大層な人気で、スタジオ・アルバムは3作目『Before These Crowded Street』から昨年リリースされた9作目『Come Tomorrow』までなんと7作連続で Billboard チャート初登場№1を記録しています。ま、米国の国民的バンドと言ってもいいですな。
てことで大陸的で大雑把な音楽と思われそうですが、これが実に細やかなバンドでして。というのも編成が少し特殊です。ギターを兼務するボーカルにドラムとベース。そこにサックスとバイオリン。ね、変でしょ?
バンドは1991年に結成されたのですが、きっかけはフロント・マンのデイヴ・マシューズがジャズ・バーでバーテンとして働いていた頃にそこの出演者に声を掛けたというものらしく、だもんで普通のロック・バンドの音楽的背景としても珍しい成り立ちです。またメンバーが黒人3人に白人2人というのもこのバンドの個性に大きく影響しているのではないでしょうか。
つーことで、演奏が上手いです。上手いだけじゃなく出自がそんなですから、かなり奇妙なサウンドを展開します。一般的なロック・バンドではないですね。それこそジャズっぽいこともやるし、R&Bは勿論のことカントリー、ハードロック、何でもござれ。でも彼らの最大の魅力はそういう何でも出来るとか演奏が上手いということではないんですね。僕もライブDVD持ってますが、単純に楽しいんです。若い女の子から白髪のおっさんまでいろんな世代が観に来てて、本当に楽しそうに踊ってるんです。
演奏が上手いから、一応ジャム・バンド的な扱われ方をしますが、そう言われるとなんか演奏に酔ってる、やたら長いインプロビゼーション(←即興演奏のことです)が待ってて、好きな人はいいでしょうけど、普通の人は退屈っていうイメージがありますよね。でも彼らはそうじゃないんです。ちゃんと間奏部分にもチャーミングなメロディがあって強弱があって、面白いことやるんです。だから、ちょっと世間のイメージとは違うかもしれませんが、僕としては遊園地みたいな人たちという印象ですね。例えばこの曲、1枚目のスタジオ・アルバムに収録されている『Ants Marching』なんですけど、後半のワクワク感が最高です。
あとこれは米国的かもしれないけど、パワーで押し切るところが圧倒的なんです。茫然とするというか、あまりに熱量が凄くて、聴いた後は放心状態になる。しばらくしてから拍手が起きるみたいな。『見張塔からずっと(All Along the Watchtower)』なんかはその典型です。
これはボブ・ディランの曲です。色んな人がカバーしてて、この曲で言えばジミ・ヘンドリックスが有名ですが、デイヴ・マシューズ・バンドの『見張塔からずっと』もすんごいです。
余談ですが、ディランはこの曲以外にも本当にたくさんの曲がいろんなミュージシャンにカバーされていて、ディランはあの独特のぶっきらぼうな歌い方ですから、勘違いされやすいんですけど、実は類まれなメロディ・メイカーなんです。他の人がやってるのを聴くとそれがよく分かります(笑)。
デイヴ・マシューズ・バンド。色々あって今はだいぶメンバー構成が変わりましたが、今も変わらずカッコいいです。ただ、来日することはほぼないでしょう(笑)。言ってみればU2がちっちゃいライブ・ハウスでやるみたいなもんですから、それってまずあり得ないわけでして。ま、それぐらい日米の温度差が激しいってことです。にしても音楽誌に一向に出てこないのは謎やな。