洋楽レビュー:
『Food for Worms』(2023年)Shame
(フード・フォー・ワームズ/シェイム)
3rdアルバム。近年の英国ポスト・パンク勢で真っ先に名前が挙がるのはファウンテンズD.C.やアイドルズかもしれないが、僕はあんまりピンと来ませんでした。どっちかというとシェイムの方が馴染みがありますね。そこそこ真面目だと自認している僕が一番やんちゃそうでやさぐれたシェイムを好きだったりするのは不思議な話ですけど。ヤバそうだしライブに行こうとは思いませんが(笑)。
結局はロックンロールの衝動とかそんなものよりも音楽としてよいメロディが鳴っているかどうかが僕にとっては重要なのかもしれない。絵に描いたように悪そうなシェイムを聴くといつもそのことを再確認するのが面白いけど、つまりシェイムの一番の強みはメロディだと思うのです。
このアルバムは時間をかけずにライブ録音したようで、歌っている内容も社会的なことよりも仲間のことを歌っているらしい。僕はそこまで歌詞を読み込めていないけど確かに全体としての雰囲気は穏やか。今回はそんな激しい曲もなく落ち着いた曲が多いけど、不思議と似たような曲ばっかだなという印象もない。この辺は流石のバンド力、つーかメンバーの曲への理解力が抜群なのだろう。
僕はやっぱりセックス・ピストルズよりも断然クラッシュが好きだし、ジョー・ストラマーに声質とか歌い方が似ているシェイムのチャーリー・スティーンもジョー・ストラマーと同じでぶっきらぼうだけどちゃんと歌心があると思っている。でもそれはバンド全体にも言えることで、彼らの場合は単にソングライティングにおいてよいメロディを書くということよりむしろ、サウンド全体のバンドとしてのアレンジに歌心が内包している感じがある。だから曲だけを抜き取って、アコースティックギターで弾き語り、なんてものよりバンドでガッとやった方が歌心が出る、そんなバンドなんだと思います。