My Mind Makes Noises/Pale Waves 感想レビュー

洋楽レビュー:

『My Mind Makes Noises』(2018)Pale Waves
(マイ・マインド・メイクス・ノイジーズ/ペール・ウェーヴス)

 

若さとは過剰であること。誰かが言っていたけど、ここにあるのは過剰さそのもの。しかしペール・ウェーヴスはそんなことお構いなしだ。まるでその過剰さこそが現実を凌駕するとでも言うように。そうだ、若さはいつも正しいのだ。

ヘザー・バロン・グレイシーによる歌詞は自身の恋愛体験を綴ったもので、それはまぁよくある話。そんなもの放っぽっておけばいい。しかしあまりに無垢で鋭利な言葉は聴き手に無視することを許さない。こちらの感情にまで真っ直ぐに踏み込んでくる言葉の力は通り一遍の‘私の恋愛物語’ではないから。そこには反逆やここではない何処かを希求する強烈な意志の力が蠢いている。これは彼女たちによる存在証明なのだ。

その存在証明こそが剥き出しの感情であり、過剰にポップなメロディであり、過剰に耳馴染みの良いサウンドであり、幾たびも登場する‘kiss’という言葉なのだ。正直言って、余りに自己主張の激しいポップ・ソングは互いに協調し合うことなんかなく、それぞれが好きな方を向いて勝手し放題。曲順なんてしっちゃかめっちゃかだ。けれどこれでいいんだと思う。多くの人が過剰さを抑えて、クールに決めようとする時代にあって、彼女たちはひたすら懸命に手を挙げているのだから。

今後、彼女たちはキャリアを重ねる中で、新たなスキルを身に付け、より多くの表現方法を獲得していくだろう。けれど、歪で不器用だけど強烈な正しさを秘めたこのアルバムの無防備なエネルギーを超えることはない。何故なら、このアルバムはどうあっても吐き出してしまわざるを得ない初期衝動によって生まれたアルバムなのだから。

 

1. Eighteen
2. There’s a Honey
3. Noises
4. Came In Close
5. Loveless Girl
6. Drive
7. When Did I Lose It All
8. She
9. One More Time
10. Television Romance
11. Red
12. Kiss
13. Black
14. Karl (I Wonder What It’s Like to Die)