Little Dark Age/MGMT 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Little Dark Age』(2018)MGMT
(リトル・ダーク・エイジ/MGMT)

 

NY出身のポップ・デュオによる5年振りの4thアルバム。僕は彼らの音楽を聴くのが今回が初めてなので、元々どういう音楽を指向していた人たちなのかよく知らないが、このアルバムに関して言えば、非常にポップであるものの、ポップというオブラートに包みきれない彼らの世界観があちこちに滲み出していて、それがこのアルバムの印象を決定付けているような気はする。

サウンド的はもう思いっ切り80年代というか、当時のMTVに彼らの音楽が混じっても違和感ないというか、1曲目の『 She Works Out Too Much』の最後でサックスがブロウ・アップするところなんて思わずニヤッとしてしまう。3曲目『When You Die』とか4曲目『Me And Michael』なんて思い出せないけどどっかで聴いた感満載だ。ただそのサウンド・デザインもそこを狙ったという訳ではなさそうで、彼らとしては今回の曲をどう響かせるかという流れの中で自然にそうなっていったというか、この辺りはもう’10年代の特権というか、昔がどうとか今はどうとかお構いなしにいいものはそれ貰いって素直に採用できる自由さがあって、それが結果的にもろ80年代になろうが、彼らとしちゃああそうですかって程度のもので、それが実は1曲目ほど全体は明るくはないのだけど、全体を通してのこのアルバムに感じる風通しの良さにも繋がっているのではないだろうか。

ただ風通しが良いからといって、全てがスムーズに流れていく訳ではなくて、全体としてはポップなアルバムなんだけど、それぞれの曲のタイトルを見ても分かるようにどこかでダーク・サイドを引きずって行くような手触りがあるのも確か。例えば、君が裏切っても僕は落ち込まないよとでも言うような、もうそんなことは始めからデフォルトで設定されているといった重い現実認識が背後に横たわっているのは結構重要だ。

チャーミングなメロディは普通にアレンジすれば楽しいポップ・アルバムになりそうだが、そうは出来ないところはもう体がそうなっちゃってんだから仕方がない。てことで我々は不穏な時代に生きているのかもしれないけど、それも彼らにしてみれば少しやな時代ってこと。逆に言えば、それぐらいやな時代ってことかもしれない。『Little Dark Age』とはよく言ったものだ。

信じられるものは実はそんなにない世の中で、そんなものさと嘘ぶくか、それともそれに抗うか。5年振りにアルバムを出したってことはそういうことだろう。てことで捉えどころのないバンド(ユニット?)ではあるが、これはやっぱりロックなアルバムなのである。

 

1. She Works Out Too Much
2. Little Dark Age
3. When You Die
4. Me And Michael
5. TSLAMP
6. James
7. Day That Got Away
8. One Thing Left To Try
9. When You’re Small
10. Hand It Over