Long Live Love/Kirk Franklin 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Long Live Love』(2019)Kirk Franklin
(ロング・リブ・ラブ/カーク・フランクリン)

 

日本ではあまり知られていませんが、グラミー・ノミネーツの常連さんですね。過去に受賞歴もございます。日本ではあまり知られていないと言いましたが割と来日公演をされているようで、そっちの世界では超有名な方です。僕も名前だけは知っていましたがちゃんと聴くのはこのアルバムが初めて。

ゴスペルということで先入観を持ってしまいがちですが(僕がそうでした)、あまりそういうのは意識しない方がいいですね。普通に格好いい音楽です。僕はこのアルバムを聴いてチャンス・ザ・ラッパーを連想しました。まぁ今どきジャンルなんてあってないようなもんですからね。ゴスペルもカニエ・ウェストが導入して以来多くのヒップ・ホップ・アーティストが取り入れていて、チャンスさんもその一人ですね。ロックの分野で言えばThe1975もそうです。

カーク・フランクリンの場合は逆にゴスペルにヒップ・ホップやロックの要素を取り入れたということでしょうか。そんなカークさんの音楽はアーバン・コンテンポラリー・ゴスペルなんて呼び方をされているそうです。ま、名前なんてどうでもいいです(笑)。

百聞は一見にしかず。一度聴いてもらうのが一番ですね。アルバム冒頭の#1『F.A.V.O.R』で僕も一気に持ってかれました。先ず曲が抜群にいいです。それも奇をてらったとかではなく、きちっとした構成の、AメロがあってBメロがあってサビがあってラスサビの前にはブリッジがあってっていう昔ながらのスタイル。クレジットを見てるとほぼカークさんが手掛けているみたいですけど、先ずここの部分が非常に優れている。今の時代にカチッとした構成でここまでいいものを、しかも何曲もやれるっていうのが基本としてカークさんにはあるということですね。

そしてサウンドもカークさんが手がけていて、ゴスペルですからクワイアですよね。クレジットによるとここが先ず総勢9名。あとドラムは一部の曲ではプログラミングのようですが、ほぼ全てがバンド形態で、キーボードはカークさん自身もこなします。特徴としてはハモンド・オルガンですよね。ここが全編に渡り聴こえてくるのがハモンド好きの僕としては非常にウキウキするポイントです。

あとこれだけでも素晴らしいのにここに大所帯のストリングスとホーンセクションが加わるんです、ほぼ全曲。どーです?どんだけ金かかってんねんっていう話ですけど、これらを持て余すどころか的確に振り分けていくカークさんのサウンド・プロダクションが本当に素晴らしいんです。もう生バンドにクワイアにストリングスにホーンに、あとカークさんの異様にハイテンションな合いの手(笑)。これらが一緒くたになってぐわっと来た日にゃ盛り上がるのなんのって。てことでサブスクじゃなくCDがお薦めやね。

僕も最初はゴスペル?カーク・フランクリン?でカークさんいう人は何しますの?っていう感じだったんですけど、これだけの仕事をされちゃあもうぐぅの音も出ませんね。これはもう完全にカークさんのアルバムです。ただ「ハレルヤッ!」とか「カモンッ!」って合いの手を入れてるだけの人じゃございません(笑)。

本当にどの曲が突出してということではなく全編素晴らしくって、色んなタイプの曲が沢山あります。先ほどカチッとした構成でって言いましたけど、そうじゃない曲も幾つかあって特に後半の曲ですよね。#8『Forever/Beautiful Grace』はタイトルが二つに分かれているように最後に違う曲がくっ付いてくる。#9『Spiritual』の最後はセカンド・ラインですかね?ここのガヤガヤした部分がいい味出してます。

で最後の曲『Wynter’s Promise』。これが曲の最後にスポークン・ワーズ、語りになるんですけどここがまた涙ながらにっていう感じで、その前のクワイアからボーカル・ソロに入っていく流れがいいんですけど、ダメを押すように涙ながらのスポークン・ワーズっていうね、どんだけ切ないねんっ!っていう。

まぁ僕もなんでこれだけ凄い人を今まで知らなかったのかなぁという感じですけど、これからはちゃんと追いかけていきたいなと。てことで次来日したら是非ライブに行きたいです。高そうやけど(笑)。

 

Tracklist:
1. F.A.V.O.R
2. Love Theory
3. Idols
4. Just for Me
5. Father Knows Best
6. OK
7. Strong God
8. Forever/Beautiful Grace
9. Spiritual
10. Wynter’s Promise