Shiver / Jónsi 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『Shiver』(2020年)Jónsi
(シヴァー/ヨンシー)
 
 
シガー・ロスのフロント・マン、ヨンシーさんのソロ第2作。本体のシガー・ロスはほとんど聴いたことがないんですけど、2010年のソロ第1作『GO』は気に入ってよく聴いた覚えがあるので、今回はどんな感じだろうとすごく興味を惹かれました。
 
シガー・ロスのこともヨンシーさんのこともよく存じ上げないので、最近の活動状況を今一つ分かっていませんが、このアルバムを聴くと乗りに乗ってるというより、今現在は過渡期なんじゃないかなと思いました。
 
もちろん、ソングライティングに長けた方なので、曲は悪くないし、何しろあの声を持ってらっしゃいますから、それっぽさはあるんですけど、なんかガシッとしたイメージが固まってこないなというのはあります。あくまで僕の印象ですが。
 
アルバム屈指のポップ・チューンがRobinて方との共作?というのもなんかねぇ。しかもまんまパッション・ピットやん!ていう(笑)。やっぱあの『GO』が大地と鳴動するようなオーガニックなサウンドで独自の世界観を築いていましたから、どうしても比較しちゃうというか。今作はあの景色が動き出すようなサウンドが見いだせないというのはあります。って繰り返しますが、あくまで僕の感想です。
 
てことでサウンドは『GO』とは対照的に機械的です。て書くと誤解されそうですが、メタリックな質感ということですね。この独特なサウンドを手掛けたのはA.G.Cookという方のようです。ヨンシーさんの神秘的な声とメタリックなサウンドの融合というのは一見相反するように見えますが、逆に相性いいです。うん、ナイス・アイデア。
 
ただやっぱりなんかガツンというのがね、じゃあそっからどう飛躍していくんだ、というのが僕の感性では掴みそこねてます(笑)。メタリックな感じなんだけど、賛美歌のような、祈りのようなヨンシーさんの教会音楽ではあると思うんです。だから聴き方をそっちに据えればよいのかもしれませんが、なんか僕の中でどっちかに偏れないという宙ぶらりんな感じが続いちゃってる感があります。
 
ていうか今回Spotifyでしか聴いてないので、あんまり偉そうなこと言えないか(笑)。やっぱリリックをちゃんと読まんとな。

Go/Jonsi 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Go』(2010)Jonsi
(ゴー/ヨンシー)

 

ヨンシーはアイスランド発のシガー・ロスというバンドのフロント・マンで、ヘッドライナー・クラスの大物バンドなんですが、私は名前ぐらいしか知りませんでした。ま、ヨンシーという名前に引き寄せられ、なんとなく聴き始めたんですけど、1曲目の「Go Do」からもうぶったまげましたね。ヨンシーさん、冒頭からこりゃ鳥の声マネですか?

歌唱はほぼファルセット。ていうか地声もこんな感じなのか。声変わりしていない少年みたいな、いや少年じゃないなこれは。彼はそのルックスや声からも妖精だなんて称されることもあるようですが、私にはなんだかアンドロイドのように聴こえます。心を持ったロボット。それはつまり少年じゃなく老成しているから。アイスランドですから地理的に見ても地球の歴史が書き込まれたかのような声。ということで、これはやっぱり生身の人の声ではごさいませんな。

この「Go Do」はストリングスや管楽器もふんだんに使われていますが、オーケストラな感じはしない。やはり優雅で中性的。そこにドラム、と言うより太鼓(と言った方が的確か)がドコドコと舞台を少しずつせり上げていくような高揚感をもたらす。曲自体もドラマチックに展開してゆくから、まるでアイスランドの大地をドローンで空撮するかのようなイメージ、山河を駆けてゆくイメージ。つまり祝祭のような音楽ですね。

続く2曲目「Animal Arithmetic」では更にスピードアップし、アクロバティックなドカドカした太鼓が曲全体を引っ張っていく。やっぱり祝祭やね。3曲目の「Tornado」になるとテンポはスローに。この人どっから声出てんの?っていうヨンシーのハイトーン・ボイスを堪能できる曲。まるでソプラノ歌手のようでいながら、かしこまった感はなくポップな仕上がりは流石というべきか。後半に向けてハイトーン・ボイスは益々高くなってクライマックスを迎えます。

後半に入るとそれこそ極寒地を思わせる厳粛なナンバーが続く。最初に述べたように異世界を覗いているような景色が時に足早に、時にゆったりと流れて行く。人類の故郷を感じさせる温かみ。けれどそこには幾ばくかの狂気を孕んでいる。そんな音楽ではないでしょうか。

まぁ兎に角ご一聴を。かつて耳にしたことなないオリジナリティ溢れるサウンドにきっと度肝を抜かれることうけあいです。

 

Track List:
1. Go Do
2. Animal Arithmetic
3. Tornado
4. Boy Lilikoi
5. Sinking Friendships
6. Kolniður
7. Around Us
8. Grow Till Tall
9. Hengilás

(Bonus Track)
10. Sinking Friendships (acoustic)
11. Tornado (acoustic)