That! Feels Good! / Jessie Ware 感想レビュー

洋楽レビュー:

『That! Feels Good!』(2023年)Jessie Ware
(ザット!フィールズ・グッド!/ジェシー・ウェア)

 

ジェシー・ウェアさん、初めて知りました。2012年のデビューで今作が5枚目になるそうです。元々評価は高かったようですが、このアルバムで商業的にも大ブレイクみたいですね。音楽業界は早くから売れる人が多いですけど、キャリアが10年経ってから時の人になるなんていいじゃないですか。

もう正面切ってのダンス・アルバムです。これでどうだというテンコ盛りのディスコ・ミュージック。ホーン・セクション満載でコーラスもいいし、サウンドがいちいち格好いいです。加えて歌唱力抜群、ジェシー・ウェアさんのボーカルですね。#3『Pearls』なんてサビでかなり高音に上がっていくんですけど滅茶苦茶カッコイイ!!そんでもってただ歌が上手い人ということではなくて、時にはラップもしますし、あと歌うまくてもリズム取れなくてカッコ悪いい人が結構いますが、ジェシーさんは声の載せ方も寸分の狂いなく完璧。ホント、最高ですね。

で、基本的にはイケイケのファンキーなアルバムなんですけど、合間に入るゆったりした歌がまた良くて、1曲目から盛り上がってさっき言った『Pearls』までグイグイ上がってくんですけど、#4『Hello Love』でポンとホッとさせるんですね。これがまたマーヴィン・ゲイみたいな穏やかなソウル・ナンバーで、実はジェシーさんはこっちが本職じゃないかっていうぐらい心温まる歌声を聴かせてくれます。個人的にはこのアルバムで一番好きな曲はこれですね。

そのピースフルな『Hello Love』のあとはラテンですよ。今、レゲトン含めラテン音楽が来てますが、いやもうそういうマーケティングではなく、冴えてる時は何やっても時代に合っちゃいますから結果そうなったんだと思います。続いてタイトルからしてアンセムな#6『Beautiful People』ですし、基本的には全編アゲアゲでガンガンくるんですけど、不思議なことにそこまでの印象はなくてすごく心地よい。一見、コッテリしたアルバムに見えて実はそうじゃない、すごく爽やかなんですね。前作からこれじゃいかんということでジェシーさん自身が全面的にサウンドを一新したらしいですが、この辺のジェシーさんの華美になり過ぎないハンドルさばきはお見事ですね。

基本的にはファンキーなディスコ・ミュージックですけど、同じ雰囲気の曲がひとつもなくてそれぞれに個性がある。けれど暑苦しくなくて爽やか。普段から音楽を聴く人もそうじゃない人も存分に楽しめるオープンなアルバムです。