洋楽レビュー:
『So Long, See You Tomorrow』(2014)Bombay Bicycle Club
(ソー・ロング・シー・ユー・トゥモロゥ/ボンベイ・バイシクル・クラブ)
英国出身の4人組。デビュー・アルバムから少しずつチャートを上げ、このアルバムではついに全英№1を獲得したそうだ。繊細なアレンジやその風貌と相まって、イメージとしちゃ文系ロック・バンドといった感じかな。
本作に取り掛かる前に、メイン・ソングライターであるジャック・ステッドマンは海外を旅したそうで、本作にはそのことが色濃く影響しているとのこと。日本やトルコにも訪れたらしく、オリエンタルな要素もちらほら。バンド名からして「ボンベイ~」っていうくらいだし、オリエンタルと言っても中国とか香港ではなく東南アジアやインド、トルコといったイメージ。アルバムのアート・ワークも東洋的だ。但し東洋趣味にありがちな変な神秘主義はないし、メロディ主体のさわやかな英国ロック。流れるようなメロディは大河を漂うようで、聴いている方も一緒に旅をしているような気分になる。そんな移動を感じさせるアルバムだ。
このバンドを特徴づけているのが女性ボーカル。ゲスト扱いのようだけど、いつも参加しているようなので準メンバーといったところかな。#6『ルナ』なんて、彼女なしでは成立しえない楽曲だ。ただでさえ流麗なメロディが際立ち、一段も二段も表現の幅が広がっている。ジャックとの相性も抜群だ。バンドの演奏も的確だし、飛び抜けた何かでアピールするというのではなく、コーラスも含めたあくまでもアンサンブル主体。なるべく目立たないように歌うボーカリストらしからぬジャック・ステッドマンも含めたバンド全体のムードが心地よい。
楽曲自体の魅力もいいのだけど、そこにメロウなフレーズのリフレインが被さって更なる相乗効果。ちょっと切ない胸キュンフレーズが抜群である。それでいてハードな部分もポップな部分も過剰にならないし情緒にも流れてしまわないまま、オリエンタルなフレーズと共に全体のバランスとして飛び込んでくる。好感度の高いアルバムだ。
アルバム・ジャケットは人が一人で歩き続ける姿を輪廻をモチーフに描かれている。そしてカバーを開けると、CDの盤面に同じイラストが。しかしそこに描かれているのは二人のシルエットだ。人は一人だという認識と、それでも人は誰かと共にいるという理解。そのことをほのかなイメージに乗せて歌う彼らのスタイルはとてもリアルなものだ。
派手さはないけど、真っ直ぐで地に足の着いたアルバム。あまり知られてはいないけど多くの人に是非聴いてもらいたい。そんなアルバムだ。
1. Overdone
2. It’s Alright Now
3. Carry Me
4. Home By Now
5. Whenever, Wherever
6. Luna
7. Eyes Off You
8. Feel
9. Come To
10. So Long, See You Tomorrow