洋楽レビュー:
『Hit Me Hard And Soft』(2024年)Billie Eilish
(ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト/ビリー・アイリッシュ)
デビューするなり一躍時の人となったビリー・アイリッシュ。 デビュー作は僕も好きでよく聴いていたものの、 これは新しい世代の音楽であり、十代の子どもたちのための音楽、 という頭があったのも事実。 しかしこの3作目はそういう部分を越えて、 世代を超える普遍的な作品になったような気がする。
まずメロディがいい。 もともと兄フィニアスは素晴らしいメロディを書く人だったけど、 ここにきていい意味で単なるポップ・ ソングになり得るだけの強度が備わったような気がする。この先、 何度繰り返しラジオで流れても消費されない強さや、ビリー・ アイリッシュという記名性はそのままに、 テレビCMで流れても平気なたくましさを獲得したのではないか。
それもあってかどうかは分からないが、 ビリーの歌い方も随分と印象が違って聴こえる。#4『BIRDS OF A FEATHER』や#6『THE GREATEST』で大声を張り上げる心地よさといったら。 もちろんこれまでの延長線上のような歌い方がメインにはなるけど 、 そういう中にこうやって感情を爆発させるようなボーカルが入って くると、 ビリーの現在進行形ぶりを感じられてこちらも嬉しくなる。
どれもがシングルになりそうなキャッチーな前半から中盤は#7『 L’AMOUR DE MA VIE』で変化も持たせて、ラストは2曲でひとつのような#9『 BITTERSUITE』#10『BLUE』 で締める。コンパクトに10曲というのもいい。 日本人としちゃ’千と千尋の神隠し’から着想を得たという#3『 CHIHIRO』も嬉しいね。若くして注目されて大変だろうけど、無理せずこれからもでよい音楽を聴かせてほしい。それにしても#4『BIRDS OF A FEATHER』は名曲やわ。