邦楽レビュー:
『The First Question Award』(1994年)コーネリアス Cornelius
一足先にリリースされた小沢健二のソロ1作目が大絶賛されていた状況は、小山田圭吾にとって相当なプレッシャーであったろうと想像する。フリッパーズ・ギターが小山田と小沢の共同作業であったことは周知のことだとはいえ、ボーカリストが小山田であった以上、小山田にそれ相当の期待が背負わされてしまうのは仕方がないところではあった。
当時、何かの雑誌で小山田のインタビュー記事を初めて読んだ僕は、想像とは違った偉そうでいきがった彼の受け答えに面食らってしまったわけだが、それは後年、彼自身がフリッパーズ解散後は不安で不安でしかたなかったと語っているように、あの時期は虚勢を張るしか自分を守る術はなかったのかもしれない。
そんな精神状態で作られた小山田圭吾改め、コーネリアスのデビュー作は恐ろしくハイパーで強烈なポップさと陽性に満ち満ちている。フリッパーズ時代の作詞は小沢が担当していたにもかかわらず、これだけの言葉数でまくしたてる小山田は一種の躁状態にあったのかもしれない。その洪水のような言葉をフリッパーズぽさを求めるファンが引くぐらいのフリッパーズぽさで’やり過ぎている’のはそうせざるを得なかったとも言えるし、小山田のやけくそも半分あったようにも思う。
が、言い換えれば、小山田の手のひらには未だそれだけのものが残っていたし、その残り物を総ざらいし、束にしたマッチ棒のように火をつけ一瞬で終わらせる作業はいずれにせよ必要であった。このアルバムはどうせならと華々しく打ち上げられた花火だったのかもしれない。しかしその総ざらいは恐ろしく練度が高い。
なんだかんだ言いながら、キレキレの小山田がここにいる。アルバム1枚を通して聴くには聴く方にもエネルギーが必要だ。