「伊集院光のらじおと(ゲスト:佐野元春)」2020.11.4 感想

その他雑感:
 
「伊集院光のらじおと(ゲスト:佐野元春)」2020.11.4 感想
 
 
 
佐野さんは40周年を機にベスト盤2種をリリースしまして、それに絡めたメディアへの露出がこのところ続いています。ラジオ出演についてはインターネットで後からでも聴けるので、全部ではないがチェックはしているんですけど、今回とくに聴きごたえがあったのが伊集院光さんの番組、『伊集院光とらじおと』での出演でした。
 
冒頭、まだ佐野さんが登場する前、つかみとして伊集院さんが話していたのは佐野元春の歌はカラオケでは歌えないという話。『SOMEDAY』を引き合いに話していたんですけど、これは僕も常々思っていたことなんで目から鱗でした。
 
佐野元春というと初期の頃なんかは特に一音に一語以上を載せたりだとか、英語を混ぜこぜにしたりというところで注目されて、この辺はサザンの桑田さんもそうでしたし、一般的にもそういう言われ方をするんですけど、一番の特徴は独特の譜割にあると僕はずっと思っていたんですね。だからカラオケやなんかで歌うと全然うまく歌えないんです、歌ってて全然楽しくない、だってかっこ悪くなっちゃうんだから(笑)。
 
ところが当然のことながら佐野さんが歌うとべらぼうにかっこいい。これはいつも僕は体内時計って言うんですけど、言葉のメロディへのフックのさせ方が抜群になんです。僕らが歌うとあんなにぎこちなくなる『SOMEDAY』を佐野さんはすごくスムーズに滑らかに歌う。その独特の佐野元春譜割を歌えるのは佐野元春だけという、これを伊集院さんは見事に言葉にしてくれて、さっきも言いましたが言葉数だとか英語だとかそういう話はよく聞くんですけど、佐野さんの譜割の話はメディアで初めて聞いたので、伊集院さん、すごいとこ突いてくるなぁと。ちなみに佐野さんは今もそうだし、この点は宇多田ヒカルさんもそうですよね。
 
佐野さんが登場してからも伊集院さんは面白いことおっしゃっていました。佐野元春は新しいものが好きなのに古いものも好きで、これは非常に珍しいことだと。例えば佐野さんはインターネットを早くからやっていた、ヒップホップ音楽を早くからやっていた。けれど一方でオールディーズと呼ばれる古い音楽が大好きだ。普通、新しいもの好きの人は新しいから好きなのであって、古いものが好きな人もこれは古いから味があるから好きなんだとなる。けれど佐野元春はどっちも好き。つまりは新しいから好きなのではないし、古いから好きなのではないのだと。これは見事でしたね。佐野さんも自身の感性をこういう風に解釈してもらって嬉しそうにしていました。
 
あと音楽の聴かれ方についてですけど、今はプレイリストなんて言って個々人が自由に音楽を聴いている。けれど作者が考えたアルバムの曲順通りに聴いていくとまた違った響きで聴こえてくるんですよという話を伊集院さんは野球が好きですから野球に例えてですね、2番バッターの役割とかを交えながら話していくんですね。それに対する佐野さんの答えもそれはコンセプト・アルバムと言うんだよと。僕は今までもそうしてきたし、これからもそうやってアルバムを作っていくと話されていて。で面白いのはそれでも佐野さんも伊集院さんも今のプレイリストみたいな線ではない点での聴かれ方についても全く否定していなくて、むしろ肯定している部分もある。けれど伊集院さんが言うのは気に入った曲があったらそれが収録されているアルバムを曲順通りに聴いてほしいなと。そうするとまた違った良さが現れますからと。とてもよい話だと思いました。
 
ちなみにこの話をするにあたって、伊集院さんは佐野さんの『コヨーテ、海へ』という曲の話から入って、それが収録されている『COYOTE』アルバムの話に繋げたんですね。まずファンとして嬉しいのは古い作品ではなく比較的新しい『COYOTE』アルバムというのを持ってきてくれたということ。そしてこのアルバムは佐野元春作品の中でも一つの映画となるようにいつも以上に全体のストーリーを意識して作られた作品だったということ。だからこの曲順とかコンセプト・アルバムの話をする例えに『COYOTE』アルバムを持ってくるのは伊集院光、よく分かってるなと(笑)。
 
今回佐野さんが色々なラジオに出演しているのを聴いてると、中には昔の話ばっかりするDJもいるんですね。ま、40周年でそれを記念したベスト盤が出る訳だからそういう話になるのは当然ちゃあ当然なんですけど、実はそれって聴いてる方もあんまり面白くない。ある番組では昔の話とか既存の佐野さんの発言を引き出そうとするDJもいて、だんだんと佐野さんの口数が少なくなって楽しくなさそうだなっていうのもあって(笑)。
 
その点、伊集院さんが番組の最後に話していたのは、伊集院さんも最初はやはり40周年だから昔の話から始めようと思っていたと。けれどちょっと話してみるとこの人はどうも昔の話には興味がない人だなと認識して、そこからは自分が今聞きたいことだけを聞こうとしていったと。実際、いくつか聞いた番組の中でもこの伊集院さんの番組が佐野さん一番楽しそうに笑いながら喋ってたし、だからやっぱ伊集院さんの観察力はすごいなと改めて思いました。
 
最後に聴き方の話でもうひとつ。今はラジオだってインターネットを通じて好きな時に聴ける。けど希望としてはほんのたまにでいいんだけど、リアルタイムで、或いは雑音の中で聴いてもらいたいなと、そんなことを伊集院さんは最後に話していました。つまりライブってことですよね。文字の書き起こしでもなく、インターネットで後から聴くでもなく、話し手が喋っている同じ時間を過ごしながら聴くというのは何かしら意味があるんじゃないか。そこを信じたいっていう。大きく見ればさっきのアルバムの曲順にもつながる話なんだと思います。
 
僕は佐野さんのファンですからついつい佐野さんの言葉に耳が向きがちなんですが、今回ばかりは佐野さんの言葉より伊集院さんの言葉が強く印象に残りました。Eテレ『100de名著』でも凄いコメントするときがありますが、伊集院さんは誰も気づかない王道を突いてくるんですね。誰も気づかないというと横からとか穿った見方とかってなるんだろうけど、そうじゃなく正面から見据えた誰も気づかなかったことを突いてくる。一般論ではなく自身の解釈でど真ん中を突いてくるっていうのは、なかなか出来ることじゃないですよね。これは爆笑問題の太田光さんもそうだと思うんですけど、ご自身の中にぶれないものの見方があるからなんだろうなと思いました。
 
伊集院さんはオレの主戦場はラジオとよく仰ってますが、それも頷ける、テレビで見る時とはまた違う魅力を発見した気もしました。伊集院さんのラジオ、他にも聴いてみようと思います。できればリアルタイムでね。

2 thoughts on “「伊集院光のらじおと(ゲスト:佐野元春)」2020.11.4 感想”

  1. いっつ
    じゃすた
    えんたていめんと

    わたしは、上柳さんのあさぼらけ
    で聴きました。

    どうしようもないつぶやき

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