洋楽レビュー:
『Petals For Armers』( 2020年) Hayley Williams
(ペタルス・フォー・アーマーズ/へイリー・ウィリアムス )
へイリー・ウィリアムス、初のソロ・アルバムだそうで。とはいえ共同プロデューサーがパラモアのテイラー・ヨークで今回最も多くの曲でへイリーと共作しているのがパラモアのサポート・メンバーであるジョーイ・ハワードで、パラモアのドラマー、ザック・ファロもいくつかの曲でドラムを叩き、ある曲ではPVの監督までしちゃってる。てことで、もうこれパラモアやん!!
だいたいパラモアってメンバーが結構変わってるでしょ。出たり入ったりもあるけど、全く同じメンバーで続いたの何枚ある?っていう感じで。だからこのへイリーのソロ作もですね、現行パラモアメンバーが何人か加わっているってことで、それはもうパラモアの新作ってことでいいんじゃないすか。
だいたいソロでやろうかって時に、自分のバント・メンバーに声かけますかね普通(笑)。ホントこの人たちの人間関係はよくわからん。ま、そういうよくわからん人間関係がパラモア的ってことでしょうか。
肝心の曲の方ですけど、これだいぶイイですね。特にへイリーのボーカル。このアルバムはここが聴きどころじゃないですか。結構いろんなタイプの曲がありましてですね、「Leave It Alone」とか「Roses/Lotus/Violet/Iris」なんかはレディオヘッドみたいな雰囲気ですし、「Creepin’」や続「Sudden Desire」はダークでビリー・アイリッシュみたいな低音ですよ。
と思いきや「Sudden Desire」のコーラスでは「サドゥン、デザァイヤー!!」って待ってましたのいかにもへイリーなシャウトも聴けるしですね、パラモアの前作で見せたカラフルでサビではリリック跳ねてる「Dead Horse」もあるし、マドンナみたいな80’s感たっぷりの曲「Over Yet」もあって、メロウでオルガンな「Why We Ever」もいいですよ、後半の転調もぐっと来ますし。
ただ今までのパラモアと比べると瞬発力というか一気に持っていく感は低いです。僕も最初はピンときませんでした。でもその分じっくりと染み込んでいくというか、やっぱそこはへイリーのボーカルですよ。実に多彩に歌い分けてる。それもわざとらしくなくごく自然にね。
こういう歌い方聴いてるとこの人は伊達にここまで生き残ってきた人じゃないんだなと、なんだかんだ言いながらへイリーは本物だなぁ、流石だなぁと改めて思い知らされます。このアルバムでの彼女の表現力はホント素晴らしいです。
あと曲調というかサウンド・デザイン含めてですね、詞は100%へイリーなんでしょうけど、メロディはどこまで関与しているのか、多分今回で言うとテイラー・ヨークやジョーイ・ハワードがメインなんでしょうけど、全体の雰囲気とか曲全体の響かせ方ですよね、多分方向性についてはへイリーがタクトを握ってると思うんですよ。パラモアの前作『アフター・ラフター』の変わり様もそうでしたけど、じゃあこっちへ行こうっていう判断、その辺は本当に抜群の感を持ってるなと思います。
ここにきてこういうしっかりとしたアルバムを出せたのは大きいと思います。へイリーさん、個人的にはカウンセリングを受けたり結構大変な時期を過ごしたようですけど、パラモアの前作『アフター・ラフター』でああいう方向転換をして、で今回は更に違う雰囲気のこれ。サウンド的にどうこうではなく、へイリー・ウィリアムスとしての、或いはパラモアとしての骨格がよりがっしりと積み上がってきたなという感覚はありますね。
Track list:
1. Simmer
2. Leave It Alone
3. Cinnamon
4. Creepin’
5. Sudden Desire
6. Dead Horse
7. My Friend
8. Over Yet
9. Roses/Lotus/Violet/Iris
10. Why We Ever
11. Pure Love
12. Taken
13. Sugar On The Rim
14. Watch Me While I Bloom
15. Crystal Clear