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『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』 第34回「226」 感想
ま、タイトルからして「226」ですから、不穏な空気で物語は進行します。時代が時代なので、この辺りの世情は描かずにはいられないですよね。ここをさらっと流さず国民にとってもどれだけ大きなインパクトを与えたか、人々の生活目線も交えながらの展開は観る方にも重たい空気を与えました。しかもそこへIOC会長のラトゥールが来日してくる。さぁ、どうする?田畑政治!!
一次は弱気になったまーちゃんですが嘉納治五郎の「やるんだよ!」の一声で吹っ切れます。図らずもラトゥールの東京案内を仰せつかったまーちゃんですが、道案内はなんと清さん!戒厳令が布かれた東京にはあちこちで道が封鎖され軍人が立っている。こりゃ抜け道に精通した者が必要だなと。そこで白羽の矢が立ったのが清さんでした。てことで小梅も登場!
いや~、やっぱこの二人は素敵ですな。画面が一気に華やぎます。孝ちゃんこと、この時は金原亭馬生って名になってますが、久しぶりの清さんと孝ちゃんの邂逅もあったりで、この回は不穏な空気で始まりましたが、第一部の登場人物たちがその空気感を見事にポジティブなものに変えていく。そーですよね、第一部の登場人物はみんな明るかった。久しぶりの大活躍の嘉納治五郎もしかり、第34話はそうした前向きな第一部の登場人物に支えられて切り開いていった回でもありました。
その極めつけは金栗四三の義母、池部幾江です。熊本に帰ったものの無気力な日々を過ごすいだてんこと金栗四三。そんな四三の元に治五郎先生から東京オリンピック招致に力を貸してほしいとの手紙が届きます。居ても立ってもいられなくなった四三は家族団らんの中、幾江に東京行きを嘆願します。
四三の変化に気付いていた幾江は意外にもあっさりと了承。ここで緊張の糸がほぐれたか四三は「俺なんかおらんくても寂しくなかでしょ」みたいなセリフを何気に呟く。しかしここで幾江はその言葉を逃さず堰を切ったように感情を爆発させる。
「寂しくないことなんかあるか!走ってばかりの息子でも4年もおらんだら寂しいわ!それが親じゃ!アホか!実の息子に先立たれたんじゃ!実の親を亡くしたお前も覚悟を決めて親子にならんか!!」
この回は226事件に始まり、ラトゥールの来日、そして清さん登場、治五郎大活躍、復興オリンピックの時のような子供たちの運動する姿。つらい世情になんとか堪える形で第一部の登場人物達のポジティブさが光を放ちました。このところ何だかなぁといった感じの四三も幾江の言葉に我を忘れて泣きじゃくる、幾江にしがみつく、その必死さのおかしみ。そうそう四三はこういう人であったと。
それにしても圧巻は幾江を演じる大竹しのぶさんでしたね。今回も行ったり来たり浮き沈みの激しい回でしたが、最後にすべてを持っていきました。四三のように観てるこっちも呆気にとられ、その後ぐわっと感極まる。演技してるとかそんなんじゃなく生々しく伝わってきました。それをユーモアで返す四三こと中村勘九郎さんも凄い。
ラトゥールにありったけの誠意を見せ、後は若者に任せたと言って去っていく嘉納治五郎。治五郎の雄姿もこれで見納めか。ってこの人に限ってそれはないですね(笑)。予告編ではあのシマちゃんの声も!
来週も楽しみだ!