洋楽レビュー:
『Gettng Killed』(2025年)Geese
(ゲッティング・キルド/ギース)
NY出身、3枚目だそうだ。こんな傑作を作っておきながら、 1枚目2枚目はパッとしなかったらしい不思議なバンド。 なんだかもう古いのか新しいのかよく分からないけど、 ロックバンドとして一番大事な気というか佇まいというか、 そういうものがギッシリ詰まったバンドだなと。 こういうのが出てくるから洋楽を聴くのはやめられない。
70年代のいなたさとか土っぽさとかを僕はよく知らないけど、 なにかしらの参照があちこちにあるのだろうとは想像できる。 ただ古さを古さのまま再現したところでこんな面白い音楽は出来な いわけで、この割れた感じとか、不協和音さとか、 断絶の時代に生きる僕たちの琴線にガシガシ突いてくる彼らの音は 完全に今の音楽でしかない。
ボーカルはトム・ ヨークみたいな歌い方というか発声ではあるけど、 トムさんはここまでシャウトしないよな。つまり荒々しいけど、 細い感じ。 ギタリストはスラッと背の高い女性でクールだけどバカみたいにギ ターをかき鳴らしている。 ボーカルが女でギタリストが男というのはよくあるけど、 その逆というのは意外と見かけない。 バンドの絵面としてとてもカッコいい。
あとアルバムジャケットにあるように管弦楽器がいい感じで挟まっ てくるが、それ以上に効果的なのが鍵盤系。 これがあることで随分と曲調が広がっていく。 特にガサガサしたスローソングでこれをやられると一気にイメージ が広がる。 荒々しいのから静謐な曲までホント間口が広いバンドだ。
僕は毎年年末になるとその年の気に入ったアルバムから1曲をピッ クアップしてプレイリストを作るのだが、 このアルバムからはどれを選べばいいのかわからない。 それぐらい突出した曲が多すぎる。う~ん、やっぱ『TEXAS』 かなぁ。
こんなの作ってしまって次はどうするんだと余計な心配をしてしま うが、2ndから急に違うベクトルを向いたバンドなので、 次も全く違う方を向くことだってあり得る。 だんだん2000年代のレディオヘッドみたいな期待値で彼らを見 たくなってきた。