『Ethereal Essence』(2024年)コーネリアス 感想レビュー

邦楽レビュー:
 
『Ethereal Essence』(2024年)Cornelius
 
 
ここで言うアンビエント・ミュージックとはいわゆる環境音楽、ヒーリングミュージックとは少し違うようだ。違うようだと言っても僕自身はアンビエント・ミュージックのことがよく分かっていなくて、昨年に京都で行われた’Ambient Kyoto’なるイベントを見に行ったぐらい。ちなみにそこにもコーネリアスは参加していた。
 
これまでのアルバムの中にも度々インストルメンタル的な、要するにボーカルの無い曲を幾つも収録しているし、アルバム以外でも色々な媒体でアンビエント・ミュージックを披露している(コーネリアスが自身のそうした一群の作品をアンビエント・ミュージックと捉えているのかどうかは不明)。今回のアルバムはそうした過去に発表したものアンビエント・ミュージック的なものを集めた作品だ。
 
と言っても、そこはコーネリアス。頭からお尻まで統一されたイメージの音楽が続き、キチンと一枚のアルバムとして成立しているので、いわゆる編集ものと言うよりはオリジナル・アルバムに近いと言った方がいい。この手のアルバムでも退屈せずに最後まで聴けてしまうのは流石というか、根っこに持つ陽性、ポップさのなせるワザ。
 
コーネリアスの取り組みとして、どうしても意味を持ってしまう人の声とそれ以外の音とを如何に並列に並べるかというのがここ数年のトライアルだったかと思うが、今回のアルバムでも例えば『サウナだいすき』とか谷川俊太郎を迎えた『ここ』においてその取り組みの一旦が伺え、とか言いながらやっぱり声が入ると言葉に気持ちが入ってしまうことも含めて、とても楽しい音楽体験がここにある。
 
特に『ここ』は先ず谷川俊太郎の朗読があって、そこに音を当て嵌めていくというスタイルを採っていて、普通はメロディやサウンドに声を乗せるのだろうけど、その全く逆を行く手法がとても面白い。いっそのこといろいろな詩人に朗読してもらうシリーズを続けてもらったらとても面白いなと思うが、そんなことはまずしないだろうな(笑)。

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