Inevitable Incredible / Kelly Jones 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『Inevitable Incredible』(2024年)Kelly Jones
(イネヴィタブル・インクレディブル/ケリー・ジョーンズ)
 
 
ステレオフォニックスのフロントマンでありソングライターのケリー・ジョーンズによるソロ・アルバム。バンド以外ではこれが3作目だそうな。2022年にフォニックスとしてのアルバムが出ているから2年ぶりの作品にはなる。相変わらず、デビュー以来2年ごとに新作というペースを守り続けている律義者である。こういうところが英国で抜群の人気を誇る理由のひとつなのだろう。
 
とはいえ、同じことはずっとし続けられない。なので、その時々の時勢に寄ったサウンドになってもおかしくないところだが、ケリー・ジョーンズはつまみ食いみたいなことはしない。インディーロックが流行ればそれ風のを作ってみたり、カントリーが流行ればそっちに行ってみたりもしたくなるだろうが、頑固一徹、ケリー・ジョーンズはもっぱら自らの手の届く地に足の着いたサウンドしかやらない。
 
フォニックスはバリバリのギター・バンドですが、このソロ作はいたって静か。ピアノとオーケストラが主体の厳かなアルバムです。バンドの時もストリングスの使い方が非常に上手い人ですけど、その技量は健在。冗長にならずに必要な箇所に必要なだけ取り入れる。あくまでもソングライティングありきだということ。
 
しかしまぁ不思議なのは、この一見なんの特徴もなさそうな曲が淡々と8曲続くわけですけど、ちゃんと聴いていられるんですね。普通は退屈ですよ、こういう動きの少ない曲がずっと続くのは。1曲の中で派手にメロディが動きまくるJ-POPとは対極になるような単調なメロディ。でも似たような曲にはならないし、なぜか心に響く不思議。
 
あの独特のシブい声というアドバンテージはあるけれど、それだけでは説明できない何かがある、ということを改めて知る。そんなアルバムです。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)