フィルム・レビュー:
『ミルカ』2013年 感想
『ミルカ』。2013年公開のインド映画です。2時限半と結構長いのですが(インド版のオリジナルは3時間!)、飽きることなく最後まで楽しく観ることが出来ました。
インド映画ということで登場人物や話の展開が今まで見慣れた映画とは異なりますので、そこが先ず新鮮でしたね。あら、そういう話しになるのね、という感じで全然先が読めません(笑)
あと悲惨なシーンもあったりするのですが、基本的には明るく楽しい映画ですので、重たい気分にはならない。まぁそれは主人公ミルカのキャラクターにもよるのですが、清々しい印象を与えてくれる映画でした。
『ミルカ』というのは実在する人物、ミルカ・シンのことです。かつて陸上400m競技で世界新記録を出したインドの国民的英雄とことだそうです。てことで言ってみれば、インド版『いだてん』といったところでしょうか。
導入部を簡単に説明するとこんな感じ。400mの世界記録保持者であるミルカは1960年のローマ・オリンピックで国民の期待を一身に集めますが、金メダル直前のゴール間近で大きく後ろを振り返り順位を落としてしまいます。そこにはミルカの悲しい過去があったのです。
その原因となるのがインド・パキスタン紛争。それはこの映画の重要や背景となるのですが、物語はそれだけではありません。流石インド映画と言いますか、映画は孤児となったミルカの成長譚でもありますし、コーチとの熱い友情やライバルとの戦いといったスポ根ものでもありますし、もちろんロマンスあり、しかも何度もあり(笑)、インド映画らしく唐突な歌ありダンスあり。社会派とか感動ものといった一つのジャンルにとどまらないエンターテイメント要素をこれでもかとぶち込んだ全部盛りの映画です。でも不思議なことに支離滅裂な感じは一切しないんですね。この辺の監督の手腕はお見事!
加えて最初にも言いましたが、ミルカのキャラクターが生き生きしていて明るく屈託がない。前向きでポジティブ。ミルカはあっち躓きこっち躓きするんですが、この度前を向いて歩いていく。そこに引っ張られる部分は大きいですね。
そういう意味でもこれはやはり大河ドラマ。あちこち飛ぶストーリーをバイタリティー溢れる主人公が統べていく。根底には陽気なポジティビティが流れていますから、これはやはりインド版『いだてん』という見方で間違いないんじゃないでしょうか。
あとミルカさん、若い頃の髭もじゃブルース・スプリングスティーンにそっくりです。私の中ではその時点で高ポイントでしたね(笑)