フィルム・レビュー:
「シェイプ・オブ・ウォーター」と「火の鳥~復活編~」 ネタバレ注意!!
「シェイプ・オブ・ウォーター」のあれこれを思い巡らす中でラストを思い返していると、手塚治虫の「火の鳥~復活編~」を思い出した。「火の鳥~復活編~」のあらすじを簡単に説明すると、、、。
舞台は数百年後の未来。エアカー(=空飛ぶ車)から墜落死した青年レオナは、最新の科学技術によって息を吹き返す。しかし人工脳によって再生したレオナの脳はあらゆる生物を無機質としか見れなくなってしまい、人の造形がまるで怪物か何か物の塊のように見えてしまう。ところがある日、レオナは美しい人間の姿かたちをした女性を発見する。彼女の名はチヒロ。レオナは大いに喜びチヒロに愛の告白をするが、レオナの目に美しい人間の姿として映るその彼女は、実は美しくもなんともない鉄の塊、作業用ロボットに過ぎないのだった、、、。
「シェイプ・オブ・ウォーター」のイライザが世界との違和感を感じているのと同じように、「火の鳥~復活編~」のレオナも違和感を感じている。そしてイライザが半魚人に同質のものを感じたように、レオナは作業用ロボット、チヒロと心を通わせる(そう。この物語はロボットの心を持ち始めた人間と人間の心を持ち始めたロボットとのふれあいの物語でもある)。
「シェイプ・オブ・ウォーター」のラストは、殺されたイライザが半魚人の治癒能力によって命を吹き返す中で、半魚人と同じ水中で生きる能力を身に付け、そして二人は自分たちの場所へと旅立っていくというものだ。
一方の「火の鳥~復活編~」ではどうか。物語は謎解きの要素もあり話が大きく展開していくが、途中、自分を復活させたドクターに、「僕は人間なんですか!ロボットなんですか!はっきりさせてください!!」と叫ぶレオナは、最終的に自分の記憶をチヒロに移植し、チヒロと一つになることを選ぶ。そして生まれたロボットが汎用型作業ロボット、ロビタ。ちなみにロビタは「火の鳥」シリーズを通して登場するキャラクターでその誕生秘話というオチもついている。
「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督が「火の鳥~復活編~」のことを知っていたとは思えないが、要は世界に違和感を感じている主人公が世間からは異質なものとされる物体と心を通わせ、最終的には二人は同種族になる、一つになるという似たようなエンディングを迎えるというのはなんとも不思議な類似性だ。
結局、人にとって最も幸せな事ことは、自分を最も理解してくれる人に出会い、共に暮らすことなんだということなのかもしれない。