想像ラジオ/いとうせいこう 感想

ブック・レビュー:

『想像ラジオ』 いとうせいこう

 

夢ばかり見ている子供でした。野球選手になって大活躍する夢や悪い奴をやっつける夢や好きな女の子に告白される夢。いや、これは夢と言うより妄想かな。ていうか今もやってます(笑)。告白しますが、僕はいい年をして未だに妄想しています(笑)。

僕には大切な家族がいます。もし何かの理由があって会えなくなったら。僕は妄想すると思います。街角で急に会って、「あぁ、こんなとこで」、みたいな妄想を。それからまた一緒に居れる妄想を。もしくは本当にこの世から居なくなったら。僕は妄想すると思います。楽しかった時、険悪な雰囲気だった時(笑)、それから今の今、一緒にいる姿を。

僕が急にこの世から居なくなる場合もあるかもしれない。そうそう、実はそういうことを妄想してしまうことがあるのです。ここで自転車で転んで頭打って死んだらどうしようとか、電車に乗ってる時に後続の電車が突っ込んで来たらどうしようとか。

でもそうなったら僕は真っ先に妻の元へ駆けつけるかもしれない。いや、きっと駆けつける。きっと空へ召されるまでに幾ばくかの猶予があるはずだ。だから一刻も早く、空へ召されるまでに何とか妻の元へ駆けつけ、先ずはこうこうこういう理由でこうなったとことを、或いは詫びや言い残したいこと、或いはあそこの引き出しは開けないでくれとかをあれこれ告げるだろう。だから妻の元へ駆けつけるまでの少しの時間を利用して、必死に考えをまとめて必死に急ぐんだ。ていうかもうこれ、妄想入ってます(笑)。

『想像ラジオ』は‘魂魄この世にとどまりて’しまったDJアークの物語。かもしれないし、もしかしたら登場人物である作家Sの作中小説かもしれない。一方でこれホントのことかもしれない、ドキュメンタリーかもしれない。時々耳鳴りがしたり、気分が悪くなったり、変な声が聞こえたりっていうのは精神疾患的なものじゃなく、事実、何かの声が聞こえているのかもしれない。でもやっぱり作者いとうせいこうの想像かもしれない。まあ何だっていいや。

僕は小さい頃、大きくなったら妄想はしないだろうって思っていたけど、40を過ぎてもまだやっている。多分、もっと年をとっても死にそうになってベッドに寝たきりになっても妄想しているだろう。好きな人のこととか、それは妻だったり、妻じゃなかったり(笑)。あと僕がカッコいいスーパーお爺さんになってたり。

今は3月だから震災関連の番組があります。気になるから観るけど、「この後津波の映像が流れます」ってテロップが入ると僕は目を閉じて耳をふさぎます。僕は大阪にいて全く被災していないけど、僕にもムリです。

想像することは止めることができない。いいことだけじゃなく嫌な事も想像してしまう。しょうがない。気付けば勝手に想像してしまうのだから。きっと僕は死んでも想像しているだろう。もしあの世があればあの世に行っても想像しているだろう。会いたい人のこととか、会えない人のこととかを。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)